人と海とをつなぐ「道具」が教えてくれること
Text=Takayoshi “Yanmer” Yamamoto(HALE Surf & Sail_Enoshima)

新型セイルを手に入れた。早速使ってみたところ、これがどうも、凄くいい。でもそれを仲間に伝えると「今年もかい?」って言われた。「いやほんとに凄いんだって、調子良すぎて人に教えたくないくらい」なんて言ってもダメ。「うまいねー」なんてかわされた。たしかに毎年同じことを言っている。本当のことを言ってるんだけど、いまや狼少年のように思われているみたいだ。だから今期はあまり言わないことに決めた。

風をつかんで海の上を走るのがウインドサーフィンである。そのための道具が毎年良くなり、それに適当にお金をかけるのは、かなりオシャレなこと、というか「わかってるねぇ」的行為であると思う。ウインドの面白さに夢中で、ずっとそれにハマり続けている僕は、だから道具を高いと思ったことがない。一年間に何回それを使って、一回分の金額はいくらになるのかを換算して「これってスノーボードに出掛けるときの交通費より安いじゃん!」と嬉しくなったことは何度もあるけれど。

ウインドサーフィン・マガジン
ⒸGunSails 2022

でも人によって感じ方は異なる。値札だけを見れば、ウインドの道具は結構高い。パソコンなんかよりよっぽど凄い道具だと思うんだけど、その気持ちを「狼少年」と捉えられるのなら、もう僕は貝のように口を閉じよう。なんてウソだ。今期は「わかっている人たち」と「わかろうとする人たち」と、その気分を思い切り共有したいと思う。

内に閉じこもるわけではない。彼らと一緒に、人が風と海とつながるために必要な道具は何かを考え、その上で彼らが手にした道具を無駄にさせないためにはどうしたらいいか、できる限りのアドバイスを送り、そして一緒に「最高じゃん!」と喜びを共有したい。

最近思う。そういうこと、つまりアフターサービス的なことを、ウインド界は改めて見直してみるべきではないかと。新しい道具を手にした人たちが、本当に、心から喜んでいる姿を見れば、周囲の仲間もその影響を受ける。「ホントかよ?」は「本当らしい」に変化していく。喜びは内から外へと広がっていく。今期はそういう姿勢でみんなに接していきたいと思う。

で、早速最近新しい道具を手にした(あるいはこれから手にしようとしている)全国の「わかってる」人たちへ。新しい道具を手にしたら、いろんなセッティングを試して、いろんな乗り方をしてみよう。パンピングしたり、ジャイブしたり、ジャンプしたり、最高速を求めてみたり。とにかくいろいろやってみる。それまで使っていた道具の枠にとらわれず「今度のはどうかな?」って感じで。

そして道具から伝わってくる感触を丁寧に感じて、その感じを再び道具に反映させる。セイルならダウンやアウトをアジャストしたり、ジョイントの位置を少しだけ変えてみたり、ブームの高さなんかを変えることでも、結構乗り味に変化がでてきたりする。

ウインドサーフィン・マガジン
ⒸFishBowlDiaries_Fanatic 2022

道具を変えたときは、それまでの自分の殻を破るチャンスでもある。モチベーションも高まるから、どんどん海に出て、どんどん楽しむことだ。そうすると未知の楽しさを発見できたりもする。

もちろん悩みが生まれることもある。「セッティング、これでいいのかな?」とか。そんなときにはまず自分で悩む。悩みぬくことでしか見えてこないこともあるし、ウインドの場合、そうすることに暗い感じは伴わない。人が道具を通して海とより良くつながることを考えるなんて、普通の人生ではほとんどない。そういう時間は、人生に深みをもたらす。大袈裟ではなく、そう思う。そのプロセスを省略するなんてもったいない。

その上で、どうしようもなく行き詰まったら、行きつけのショップの人や仲間に相談する。自分の道具に乗ってもらったりしながら、どんどん(もちろん塩梅をみながら適度に)まわりの人たちを巻き込んでいくといい。その渦が内から外へと大きくなるほど、あなたはいい環境にいるということになる。

断言しよう。新しい道具は、乗り手にいろんなことを教えてくれる。それを通して何かを感じようとする人には、必ずね。

Keep windsurfing, there’s always something to learn.

─── 山本隆義(ハレ サーフ&セイル_江の島


Windsurfing Magazine
ウインドサーフィン マガジン


▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_18 / 最高の冬の過ごし方〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_17 / 調子がいいとか悪いとか〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_16 / いい波乗ろうね、波がなくても〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_15 / 「動中静」と静かに囁く〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_14 / 素晴らしきウインドサーフィンは、しかし〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_13 / 究極のリラックス・フォームとは?〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_12 / 『ウインドノート』見つけた〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_11 / 「努力しろ」なんて、誰が言う?〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_10 / 全部自分が決めている〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_09 / のんびり行こうぜ、オレたちは〉