最高の冬の過ごし方
Text=Takayoshi “Yanmer” Yamamoto(HALE Surf & Sail_Enoshima)

「冬を制する者、ウインドを制す、ですよね」突然そう聞かれて腰が引けた。「制する」って、そんな大袈裟な‥‥。とはいえ、冬も含めて一年を海で過ごすと、春くらいから急激にレベルが上がるのは確かなことで、また冬からウインドを始めた人が、いい感じで力の抜けた乗り方をマスターしていき、とんとん拍子にうまくなっていくことが多いのも事実です。そう考えると、冬には不思議な力があるような気がしてきます。

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ⒸLoftSails 2022

「冬」といえば───。

───「北風」南向きのビーチではオフショアとなり(流されやすいというリスクはあるものの)フラットな海面に適度な風の組み合わせという、セイルに乗ってスピードを楽しむための最高のコンディションがもたらされます。プレーニング、レイルジャイブなど、ビギナーからエキスパートまで、ウインドのスリリングな部分を満喫できます。

───「人が少ない」のもいいところ。少し寂しくはありますが、ウインドには広い視野が必要です。人が多いと自然に視線は人をとらえ、多くの場合、広がりのある視野をキープできなくなります。人が少なければその心配はいりません。視野は広がり、ゲレンデの隅々までをとらえることができます。地形と風と海面に合わせて、自分があるべき場所に自分を運ぶという、ウインドに重要な能力を高めていくことができます。

もちろんその視野の中には空気も水も澄んだ、きりりとした冬の景色も飛び込んできます。とくに海の上で見て感じる夕日や朝日は格別です。「オレはいま地球に包まれている、この感じ、普通の人にはわかんないだろーなぁ」と、そんな気分になります。そういう特別な感覚を、冬の海にやって来るコアなウインドサーファーたちと共有し、彼らと交流するのもまた気持ちのいいことです。

───けれどそれでもやっぱり「冬は寒い」しかし。何事においても、もちろんウインドサーフィンでも集中力が大切です。だらだらのんびりやるのも悪くはないけれど、冬はそういう気分にもなれません。自然と短い時間に集中して乗ろうという感じになり、時間に対するウインドの密度が高まります。

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と、こう考えてみると、冬のデメリットだと思っていた多くのことが実はメリットでもあり、それは上達の手助けをしてくれるものであることがわかります。ものは考えよう、とらえようです。

「冬を制する者───」と気合をいれるのもいいけれど、この冬はもう少し自然な感じで海に出てみてはどうでしょう。それでも寒くて身体はこわばります。十分な準備運動は忘れずに。それからしかめっ面にも気をつけて。とくに冬は、顔の筋肉も柔らかくほぐしておいて、努めて「笑顔」で乗ることが大切です。危ない人のように思われても気にせず、ニタニタし続ける。そうすることで余分な力が抜けます。しなやかに動けるようになり、その動きが身につきます。

そのようにして冬を過ごした人は、暖かい春を迎えると、より的確に風や海面に対応できるウインドサーファーになっています。彼らにとって、春は始まりの季節ではなく、結果の出る季節になるわけです。それではまた。今度の春がいい春になりますように。

─── 山本隆義(ハレ サーフ&セイル_江の島


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