ウインドサーフィン Q & A
Serial No. 011_EQ 006_Restart Gear 02
Q(前回の続き。今回は「セイル選び」について):ウインドサーフィンをダイエットも兼ねて、24年振りに再開しようと考えています。現役(?)当時は『トノクラフトの(スラロームボード)ランファン285(120ℓくらい?)』に30cm強のG10フィン、セイルは『エアロフォイル(エアロテック?)の6.0㎡(2カム)』を使っていました。ハーネスの掛け外しは思い通りにできていましたが、ウォータースタートの成功率は2~3割、ジャイブは一応できるけれど、イン側のレイルを沈めての(レイル)ジャイブはできないレベルでした。
24年も経つと道具が進化しており、ボードとセイルのサイズの選択に悩んでいます。現状では「セイルは7.0弱~7.5㎡を中心に」ボードは走り系のフリーライドをと考えています。風が弱い時にも乗れるよう、フォイルの使用も想定しています。できればウインド歴が長く、当方が使用していた道具を知っている方にアドバイスをいただければと存じます。
▶︎質問=中島照佳さん(47歳 / ウインド歴5年、以後24年ブランク / ホームゲレンデ=広島県福山市、芦田川)
|| “昔より大きめ”でOK
A(セイル選びについて):24年前(1997年)私は3カムの6.6㎡をレギュラーセイルとして使っていました。今はそれが7.8㎡の3カムになっています。年齢を重ねて(すでに還暦をこえて)体力が著しく落ちているはずだし、とっさの反応速度や体のキレも鈍っているはずなのに、昔よりも1㎡以上も大きいセイルを使っています。その理由はただひとつ。セイルがとんでもなく進化しているから。
昔の6.6㎡と今の7.8㎡を比較すると、セイルアップ時の重さは大差無し、強風に対する適応力もドラフトの安定性の違いからほぼ同等、むしろドラフトの移動が少ない今の7.8㎡の方が強風でも扱いやすく、広い風域で軽快に使用できます。
そんなわけで、かつて6.0㎡を使っていた中島さん(質問者)がウインドをリスタートするにあたって「7.0弱から7.5㎡くらいのサイズを考えている」というのは大正解だと思います。
ただしボードの場合と同じで、適正セイルサイズは乗り手の体格によっても変わってきますので、参考のためにその目安を以下に記しておきます。
▶︎体重65kg以下:6.8~7.3㎡
▶︎体重65~75kg:7.0~7.8㎡
▶︎体重75kg以上:8.0㎡以下
大柄な人なら8.0㎡以上でもいいのでは? と、そう思う方もいるかもしれませんが、それくらい大きなセイルになると弱風を重視したデザインが採られることがほとんどで、幅広く使うのが難しくなり、気持ち良く乗れる風域が限られてしまいます。せっかく長いブランクのあとでウインドを再開する決心がついたのに、そんなのいやですよね。というわけで、大きすぎるセイルは避けた方が無難だと思います。
|| 乗り手の適応力を広げる0カムセイル
次に選ぶべきセイルの種類について。今の走り系セイルは大きく3つ───最上級モデルのトップレースセイル(カムが3つ以上)/トップレースセイルの性能を踏襲しながら軽さ・操作性を考慮したセカンドレースセイル(2カムか3カム)/さらに軽さ・使いやすさを追求したノーカム・フリーライドセイル(0カム)───に分かれています。
なかでも中島さんにお勧めなのはノーカム・フリーライドセイル。他のセイルに比べてセイルアップやタックやジャイブをするときの体感重量がそれはもう圧倒的に軽く、強風ブローを受けたときにもその衝撃をマイルド化、乗り手の適応力の向上に貢献してくれるからです。
24年前のノーカムセイルには「ビギナーが使う、ちょっとチープな代物」というイメージがあったかもしれません。そもそも(ウェイブセイルは別にして)ボードとセットで付いてくるコンプリートセイル以外にはノーカムセイルはほとんど見られなかったから。でも今のノーカムセイルは別物で、驚くほど高性能です。「昔はバリバリにレースをしていたけれど、今はカムセイルからノーカムセイルに買い換えて楽しくプレーニングを満喫している」というベテランセイラーもたくさんいて、彼らはそのライディングで今のノーカムセイルの性能と信頼性の高さを証明してくれています。
なおノーカムセイルには『ノーカム・フリーライド』の他に『ノーカムレース』など呼び名の違うものもありますが、これはあまり気にしなくても大丈夫です。今やカタログに出ているようなブランドのそれらはどれも軽量高性能です。好きなブランド、好きなカラー、ショップのオススメなどにより選択すれば、ほぼ間違いのないセイルを手にできるはずです。
ただしノーカムの『ウインドフォイル(セイル)』というのがあるのは覚えておいてください。これらの多くは「誰でもウインドフォイルが楽しめるように」と開発されたセイルです。その特徴は、バテンの数が少なめで自重が軽いこと、ブーム長が短めでセイル全体がハイアスペクト(縦長)なことから操作性に優れること、ローエンドパワーと加速性・フライトスピード持続力に優れるデザインが採られていることなどですが、これをウインドサーフィンに用いると、例えばセイルの(初速性・加速性、安定性などに貢献する)フット部のエリアが大きすぎて十分にセイルをアフターレイキさせた(テイル側に傾けた)プレーニングフォームを取りにくいとか、、ジャイブのセイル返しでフット部が水面に接しやすいなど、ストレスや失敗の誘因になることがあります。
当たり前のことですが、ウインドサーフィンを再開するにあたってはウインドサーフィン用のセイルを使うのが一番です。今回お勧めした『ノーカム・フリーライドセイル』なら後々ウインドフォイルに兼用することもできます。なにせウインドサーフィンをプレーニングさせるパワーがあり、元々扱いやすいセイルです。揚力発生効率の高いフォイルで浮き上がることだって難なくできます。ただ初めてウインドフォイルに挑戦する際には、もう少し小さめのセイルが必要になるかもしれないけれど。まあそれについてはあとで考えるべきことだと思います。
それでは中島さん、ウインドライフ第二章、張り切って楽しんでください。
▶︎回答=柴崎政宏(逗子レーシング)
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▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_010 / 24年振りにウインド再開・ボード選びについて〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_009 / ウインドフォイル・最初のフォイルは・・・〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_008 / 沖に出るときにスピードが鈍りがちなのですが・・・〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_007 / GAのFW用セイル(10㎡以上)は、もう日本には入ってこないのでしょうか〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_006 / マストとブームの長さって、どこからどこまでを指すのですか〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_005 / 4.1㎡のセイルにマッチするお勧めのボードを教えてください〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_004 / ハーネスの掛け外しとタック・ジャイブの練習をしているのですが・・・〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_003 / 再び御前崎でウェイブに挑戦したいのですが・・・〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_002 / セイルサイズとジョイントとの位置関係を教えてください〉
▶︎〈ウインドサーフィン Q & A_001 / ジャイブに入るときのハーネスを外すタイミングがわかりません〉
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