ウインドサーフィン質問箱 / Q & A_006

ウインドサーフィン Q & A
Serial No. 006_Tune 002_Mast & Boom Length

Q:セイルに表示されているマスト、ブームの長さってどこからどこまでを指すのですか?  
ジョイントの形状などが違えばテンション値もかなり変わってくると思うのですが・・・。
私はシマーのセイルとマスト、セバーンのカーボンブーム、プロリミットの新しいエクステンションを使用しています。ホント今さらなんですが基本中の基本を再度教えていただければと思います。
▶︎質問=岡田浩一さん(58歳 / ウインド歴=27年リターン組 / ホームゲレンデ=新潟県野積海岸)

Ⓒ GA Sails_John Carter
Ⓒ GA Sails_John Carter

Aセイルにもよりますが、多くの場合はフット部分───あるいはバテンポケットやセイルバッグなど───にセッティングの際に必要なダウンとアウトのテンションを示す数値が記載されています。典型例は「LUFF」と「BOOM」の二項目としてですが、中には「MAST+ EXT」と「BOOM」であったり「LUFF」「MAST」「BOOM」と三項目の数値が記載されているものもあります。

まずはわかりやすい「BOOM(ブーム)」から
2_SX6“cm”で表示されているその数値は、そのセイルを張り上げるのに必要なブーム長のこと。ブーム長とは=ブームの内側、マストが当たる前縁からブームエンドの内側まで(写真赤線部)の長さのことです。

例えば「190~236cm」のブームなら、その長さが最短で190cm、エクステンションをいっぱいまで伸ばせば236cmになるということで「BOOM=214cm」という表記のあるセイルを張る場合には、エクステンションを24cm伸ばして、エンドぴったりまでアウトを引けばいいわけです。これは簡単ですね。

ただし手持ちのブームのベース長(一番短くしたときの長さ)が195cmで、エクステンション幅が2cm刻みである場合にはブーム長を214cmに調節することはできません。そのような場合には、ブームを215cmに伸ばしておいて、ブームエンドの内側とセイルの最後端との間に1cmの隙間を開けてセッティングします。

 
次は「LUFF(ラフ)」について
ラフ長とは=マスト+ジョイント(エクステンション)の長さのこと。「そこまでダウンを“きっちり”引いいてね」という数値のことです。「LUFF=474cm」という表記のあるセイルを460cmのマストで張る場合には、ジョイントエクステンションを14cm伸ばしてダウンを引くことになります。

でもこれを“きっちり”引くのは難しい。きっちりとは=セイル最下部のプーリー(滑車)の下縁をその数値に合わせる、ということなので、上記のセッティングできっちり引くとなると、セイル側のプーリーをジョイント側のプーリーと密着させるまでダウンを引かなければなりません。

実はこれはほとんど不可能です。なぜなら両者の間にはシートが介在しているから。どんなに正しいシートワークでセッティングを進めても、必ずシートが交差する部分がでてきて、その分の「誤差」が生じるからです。

ではどうするか? 最初からその誤差を考慮して、ジョイントエクステンションをひと目盛り分(大概は2cm)伸ばして対処するのが普通です。つまり「LUFF=474cm」のセイルを460cmのマストで張る場合には、エクステンションを16cm伸ばしておいて、残り2cmのところまでダウンを引くわけです。これできっちり数値通りにダウンが引けます。

(左)ラフ長とは=マスト+ジョイント(エクステンション)の長さのこと。セッティング時には、セイルのプーリーの最低部(黄線)がその長さに合致するところまでダウンを引く。走り系のセイルの場合には、それよりも下にフットが張り出しているのだが、その部分はラフ長には含まれない |(右)セイル側のプーリー(滑車)がジョイント側のプーリーに密着するまでダウンを引き切ることはできない。そのことを考慮して、予めジョイントエクステンションをひと目盛り分長くしておけば「きっちり」指定値までダウンテンションをかけられる。
(左)ラフ長とは=マスト+ジョイント(エクステンション)の長さのこと。セッティング時には、セイルのプーリーの最低部(黄線)がその長さに合致するところまでダウンを引く。走り系のセイルの場合には、それよりも下にフットが張り出しているのだが、その部分はラフ長には含まれない |(右)セイル側のプーリー(滑車)がジョイント側のプーリーに密着するまでダウンを引き切ることはほぼ不可能。そのことを考慮して、予めジョイントエクステンションをひと目盛り分長くしておけば「きっちり」指定値までダウンテンションをかけられる。

最後に他の表記をどのように理解すればいいかについて
「MAST 370 + EXT 32」という表記がある場合=370cmのマストにエクステンション分の32cmをプラス、ラフ長を402cmにしてセッティングする。ということになりますが、この場合もその通りにエクステンションを32cmにしたのではダウンを引き切ることはできません。ひと目盛り分伸ばしておくことで、初めてきっちり引くことが可能になります。

※また例えば「MAST 370」という表示は「370cmのマストを使ってください」ということです。上の例でいえば、ラフ長が402cmのセイルなら、400cmのマストにプラス2cmのエクステンションでもいいようなものですが「それではセイルが想定通りの性能を発揮できない可能性が高くなります」ということです。

マストは「長いほど硬く」なります。故にデザインをする上で想定したそれと長さが異なるマストでは、セイルが十分に機能しないということが起こり得ます。さらに指定よりも長いマストを使うと「ダウンがキツくて最後まで引けない」とか、逆に短いマストを使うと「ダウンが緩いので、楽に指定値以上に引けてしまう」ということが起こるので、それを考慮してチューニングをする必要が生じてしまいます。いろいろ複雑に(面倒臭く)なるわけです。正しく、実際的にセイルの指定値を理解することでウインドサーフィンはシンプルになります。

▶︎回答=柴崎政宏(逗子レーシング)

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