『御前崎ジャパンカップ 2023』Day 4(3月19日|日)

THE UNIFIED PWA IWT WAVE TOUR CROWNING THE WORLDS BEST RIDERS

2023 SPICARE OMAEZAKI JAPAN CUP
Men & Women Wave / March 16-21 / Long-Beach, Omaezaki, Japan / Photo by Akihiko Harimoto

午前10時、会場に到着。今日は日曜日。多くの車が駐車場を埋めている。サーファーが多いのはいつもの週末通りだけれど、今日はこの大会を見に来た人たちも多いみたいだ。そのため僕はコンテストエリアからかなり離れた場所に車を停めることになったわけだけど、それは嬉しきことに支払う代価のようなものなのだと納得する。

車から出る前にまず日焼け止めを顔に塗る。二度塗りする。昨日は冷たい雨だったが、今日は御前崎に春が戻ってきた。じりじりと音を立てるような日差しがある。風は‥‥ない。海に向かって左からのクロスオンショアがイベントサイトのブランド旗をわずかに揺らしているだけだ。この風が上がることはない。関係者の多くがそう思っていたはずだ。暖かすぎる、春が早く来すぎたのだ。冬の西風はどこかへいってしまった。

|| トップライダーとギャラリーがウインドサーフィンでつながる

ジャッジタワーの後ろの小さな広場で選手のサイン会が始まる。横一列に並んだ机の前に選手が並んで着席し、その机に沿うかたちでファンの人たちが右から左へと流れていく。ファンの人たちはみな無料で配布された大会ポスターやブランド・ステッカーを手にしている。それにサインをしてもらうのだ。リカルド・カンペロ、アントワン・マーチン、ロビー・スウィフト、マーク・パレ、フィリップ・コスター、タカラ・イシイ、ハヤタ・イシイ、タクマ・スギ‥‥世界のトップライダーたちによるサインの寄せ書き。無料が一気に豪華な記念品になる。よかったですね、みなさん。

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トップライダーたちによるサイン会。する方ももらう方もみんな笑顔だ。

続けて様々な景品を賭けたじゃんけん大会が行われ、これで午前の部終了。それにしてものどかだ。御前崎のウインドサーフィンといえば、寒さと強風とで縮みあがることが多いので、ここでこうもほのぼのとした雰囲気に包まれると逆に非日常というか、新鮮な思いがする。大会期間中に一日くらいはこういう日があってもいいよなと思えてくる。ずっとこうだともちろん困るわけだけど。

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世界チャンプ『ブラウジーニョに訊く』昨日より今日、今日より明日、少しづつ成長していこうね、と彼は言った。

13:00 午後の部が始まる。まずはウェイブワールドチャンピオン『ブラウジーニョに訊く』Q&A式トークショー。石井孝良、杉匠真、白方優吏、石井颯太、4人の日本のトッププロが順番にブラウジーニョに尋ねるーーあなたのライディングはパワフルですけど、道具の選択基準は? オーバーなものは選ばない、あくまで自分がコントロールできるサイズのものを選択する/身体作りに関して気をつけていることは? ウインドサーフィンやサーフィンばかりをしていると特定の筋肉だけが鍛えられてしまう。だから週に何度かはジムに行ってワークアウトする。身体のバランスを整えるためにね/ジャンプを練習していて失敗するとすごく痛いんですけど、あなた場合はどうですか? そりゃあ痛いぜ。落ちたときの僕の顔を見ればわかるはずだよ。ジャンプの練習で大事なことは、やると決めたら躊躇せずにトライすること。中途半端な気持ちでやると怪我をする確率が高くなるからーーなどなど(興味のある人は大会4日目のハイライト動画をご覧ください。『JWA CH』で検索)。ブラウジーニョはウインドサーファーではない人にもわかるように、あまり専門用語を使わずに、丁寧に質問に答えていた。ウインドサーフィンの世界チャンピオンはイケメンでいい人だということが誰にもわかる、とてもナイスなショーだった。

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ウインドサーフィンの世界チャンピオンは、イケメンで優しくて、とても強い。

そのショーの終わりに藤枝明誠高等学校の生徒さんたちの紹介があった。彼らはこの大会に外国人選手とギャラリーとのコミュニュケーションを取り持つボランティアの通訳として参加している。英語教育に熱心な高校なのだろう。英語を学ぶには実際に英語を使うのが一番と、この大会を教育の現場として選んだのだと思う。付き添っていた先生からも静かな熱意のようなものが感じられた。生徒のみんなはウインドサーフィンのことは知らないみたいだったけど、みんな笑顔で楽しそうに勉強していた。良かったですね。ありがとう。

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通訳のボランティアとして参加した藤枝明誠高等学校の生徒のみんなと。

午後の部・第二部。トゥーイン・ウインドサーフィンによるデモライド。これがどんなものかというと、風がないからレスキュー用のジェットスキーでウインドサーフィンを引っ張る。ジェットとウインドはロープでつながる。ウインドの乗り手は片手でブームを、片手でロープを掴んで、引っ張られる。両者はスピードをつけて海面を走り、ウインドの乗り手は頃合いを見てロープを手放し、そこから何らかのアクションを仕掛ける。

ウインドサーフィンの大会では、サブイベントとしてよく行われる「トゥーイン」だけど、それはフリースタイルやレースの大会でのことで、ウェイブの大会ではあまり行われることはない。なぜなら海面にうねりや波があると、ジェットのドライバーにとってもウインドの乗り手にとっても、引っ張り、引っ張られ、いい場所を選択して、タイミングを見計らって、いざアクション! というプロセスの全部が一気に難しくなるからだ。

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トゥイン・ウインドサーフィン。杉匠真、グリングリンと見事に空中二回転。

今回ジェットのドライバーは、現役選手で今大会にも参戦している野口貴史プロが務めた。ウインドに乗ったのは小林悠馬と杉匠真の両プロだった。失敗もあったけど、それも芸のひとつとして会場を沸かせた。匠真が波を使ってぱっと空中二回転を成功させたときには、多くのギャラリーが両手を頭の上にあげて拍手した。そのとき海側の3人と陸側のギャラリーがウインドサーフィンでつながった気がした。いや、ほんとに。海側の3人の方々、お疲れさまでした。陸側のギャラリーの皆様、ウインドサーフィンって凄いでしょ、本当は(風が吹けば)もっともっと凄いですからね。また見に来てくださいね。

その後は風待ち。午後3時を過ぎたころに大会コミッティから選手に向けてのアナウンス。「今日はこれで終わり。明日はレイデイ(休息日)とする。明後日(3月21日、大会最終日)は午前11時に会場に集合」ええっ、レイデイ? そんなに風が吹く可能性が低いわけ? 風予報を確認してみる。さて御前崎ロングビーチはと‥‥20日=マックス8ノット(4m/s)/ 21日=マックス10ノット(5m/s)。げっ、強風を示す濃い色のマークがどこにもない。ただただライトウインドを示す淡い色が並ぶばかりだ。なんてこった。こんなに凄い選手たちがすぐそこに、ほら目の前にもいるというのに。

※そんなわけでこのデイリーレポートも明日のぶんは休載。明後日も何か変化があった場合にのみ、情報を更新することといたします。ご了承ください。それでは失礼して心の叫びを実際に発声させていただきます。「くそっ、残念っ!」でも大会初日のパフォーマンスにより、世界のトップ選手はライトウインドでも全力を尽くし、コンディション以上の動きを見せてくれることが確認できた。これで強風が吹いたら、彼らはどこまでいってしまうのかと、見るものに大いに期待を抱かせてくれた。ノー・リミット。本物の彼らを御前崎で見てみたい。もし今年がダメなら、来年にでも。いや彼らの限界は日々更新されているのだろうから毎年でも、だ。


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3月20日(レイデイ)大会のスポンサーでもある高松神社で波乗り安全祈願。