『御前崎ジャパンカップ 2023』Day 3(3月18日|土)

THE UNIFIED PWA IWT WAVE TOUR CROWNING THE WORLDS BEST RIDERS

2023 SPICARE OMAEZAKI JAPAN CUP
Men & Women Wave / March 16-21 / Long-Beach, Omaezaki, Japan / Photo by Akihiko Harimoto

御前崎ロングビーチに朝から冷たい雨が降る。風はいつもとは逆の東の微風。暗いグレーの色見本のような空からは吉報の予兆は感じられず、ただただ停滞を受け入れるだけの時間がすぎていく。

仕方ない。これも自然から多くを受け取るウインドサーフィンというスポーツの一部なのだ。道具が良くなった最近では、以前に比べて格段に「風待ち」の時間は減ったのだが、それでもコンパクトな道具で自由に動くことを旨とするウェイブでは強めの風が必要で、その空白の時間の減少度合いは他の種目ほどは大きくない。

だからまあ仕方ない? いや、この時季の御前崎ならそれくらいの風は当たり前に吹くはずなのだ。なのに「大会になると風が止む」というジンクスが破られずにあることが恨めしい。

そんなわけで今日の競技はキャンセル。僕は早めにホテルに戻り、こうしてパソコンを叩いている。できれば大会期間中に御前崎ならではの嵐のようなコンディションに恵まれることを祈りつつ。「彼ら」がそこに創造するだろうワイルドなドラマをイメージしながら。

ウインドサーフィン・マガジン
With World Top Wave Riders

「彼ら」とは、もちろん今回御前崎にやって来た世界のトップライダーたちのことであり、また彼らを「迎え撃つ」というに相応しい力のある日本のウェイブライダーたちのことである。本来の御前崎で彼らはどんな戦いを見せてくれるのか? 大会後半に「その日」が来ることを期待して、ここに簡単な「選手名鑑」を(任意抽出方式で)作成することにする。これから会場に来たりライブ中継を見たりするファンの皆さん、よろしければ(今大会中に撮影された写真を見ながら)ご一読ください。

|| World Top Wave Riders(選手紹介)

▼Marcilio Brawzinho Browne(BRA-105)
ウインドサーフィン・マガジン▲マルシリオ・ブラウジーニョ・ブラウン=PWAウェイブランキング1位/33歳。風がスタボーでもポートでも、波が小さくても大きくても、波乗りでもジャンプでも、常に最高レベルのパフォーマンスを見せる現在最強無双のオールラウンダー。速く、鋭く、深いライディングでボードから波のフェイスに強烈な圧をかけ、その反動を利用してぶんっと加速するようなターンをメイクする。選手の中にもファンが多く「ブラウジーニョのように」という比喩はウェイブ界の常套句になっている。

▼Philip Koster(G-44)
ウインドサーフィン・マガジン▲フィリップ・コスター=PWAウェイブランキング2位/29歳。2011年に16歳で世界チャンプとなり、その後も4度王座を獲得した天才ウェイバー。スペイン・グランカナリア島のポッゾがホームポイントで、ポートの強風を得意とする。ツボにはまったときのジャンプの高さ、波乗りのスピードは尋常ではなく、それが生み出す時間的・空間的余裕により、難易度の高い技を楽々とメイクする。ただ身長190cmと大柄で身体に厚みもあるためにライトウインドでは戦闘力の低下を免れず、また戦歴を見るにスタボーの風を若干苦手としている面もある(と思われる)。

▼Ricardo Campello(V-111)
ウインドサーフィン・マガジン▲リカルド・カンペロ=PWAウェイブランキング5位/37歳。10代で3度フリースタイル王者になり、その後ウェイブのスペシャリストに。波上の動きにフリスタの動きを取り入れたそのスタイルはウェイブライディングに変革をもたらし、その流れは今も多くの選手に受け継がれている。ジャンプは高く波乗りは鋭くというのが彼のスタイルの基本だが、一番の特徴はライディングにサプライズがあること。「何をしでかすかわからない」という緊張感を生み出してギャラリーの視線を集め、それを釘付けにすることだ。

▼Antoine Martin(F-193)
ウインドサーフィン・マガジン▲アントワン・マーチン=PWAウェイブランキング6位/29歳。ハイリスク・ハイリターン、常に波の際を攻める男。ジャンプもエアーも危うく・ビッグなエアリアル・モンスター。というと「一発屋か?」と思われるかもしれないが、違う。彼はこれまでのキャリア(ツアーデビューは2011年)の中で何度も「際」を経験し、そこから抜け出す術を知っているように思われる。2018-19年、IWTツアー連覇。2019年『アロハクラシック』チャンピオン。

▼Marc Pare(E-334)
ウインドサーフィン・マガジン▲マーク・パレ=PWAウェイブランキング7位/24歳。スペイン・グランカナリア島のポッゾがホーム。ゆえにポートの強風が得意だが、スタボーの風が苦手というわけではない。近年は多くの時間をマウイで過ごし、いやというほどスタボーの風に乗っている。聖地ホキーパでも屈指のフォトジェニックなウェイブライダーとして認められる存在になっている。2017年PWAユース・ワールド・チャンピオン。去年のシニアツアー、ドイツ・シルト大会では優勝まであと一歩の2位。成長と勢いは止まらない。今大会の優勝候補の一人だ。

▼Robby Swift(K-89)
ウインドサーフィン・マガジン▲ロビー・スウィフト=PWAウェイブランキング9位/37歳。3歳でウインドを始めた。父は彼のアイドルであったロビー・ナッシュにちなんでロビーという名を子に与えた。その子ロビーは2000年にツアーにデビューして以来、もう23年もウインドサーフィンのトッププロとして活躍を続けている。リザルトの上位を見れば、いつも彼の名前がそこにある、安定のシングルフィニッシャー。けれど「全然満足していない」夢は今でもウェイブ・ワールド・チャンピオンになること。そして地球上で一番でかい波に乗ることだ。

▼Takuma Sugi(J-7)
ウインドサーフィン・マガジン▲杉匠真=PWAウェイブランキング10位/20歳。2021年、PWA_U-20クラス(ウェイブ)でワールド・チャンピオンになり、翌22年にシニアツアーに本格参戦、いきなりウェイブで10位、フリースタイルでも9位と、ダブルでシングルランカーになった日本の希望。ウインドサーフィンにおいて苦手なことは何もない。ウェイブにフリスタトリックを織り込むのは当たり前。四六時中ウインドのことを考え続けるのも自然なことであるという。どんなコンディションでも自分を輝かせる術を知る、若きオールラウンダー。

▼Takara Ishii(J-20)
ウインドサーフィン・マガジン▲石井孝良=PWAウェイブランキング14位/22歳。2017年IWT_U-21クラス・チャンピオン。翌18年からはプロクラスに本格参戦、多くの経験を積み上げ、昨年のPWAカーボベルデ大会で6位、見事にその才能を開花させた。フェイスのある波に乗らせたら天下一品、彼がそこに描くマニューバーは新進気鋭のアーティストが描く絵画のごとし。それは美しくオリジナルで、一瞬で見るものが息を呑む雰囲気をつくり上げる。もちろんリップからのエアーやジャンプも上手い。遠目にも「孝良だ」とわかる型がある。

▼Bernd Roediger(US-1113)
ウインドサーフィン・マガジン▲バーンド・ロディガー=PWAウェイブランキング17位/26歳。波に合わせて浅いラインも深いラインも自由自在、リップではエアー、スライド、トリックなどをメイクして、すべてのライディングに鮮やかなコントラストを生成する。その動きから軽業師とも見られがちだがそうではない。彼の動きには重みや深みもあり「風や波を使い切っているからこそそれができるのだな」と、周囲を唸らせる説得力がある。2022年カーボベルデ大会でPWAツアー初優勝。スタボーのゲレンデでは、とくにその強さを発揮する。

▼Hayata Ishii(J-27)
ウインドサーフィン・マガジン▲石井颯太=PWAウェイブランキング41位/17歳。彼は波のピークと共に移動する。そこにしかない大きなパワーをスピードに変換してタイトにボトムターンをメイク、バーチカルにリップへと登っていいく。行く手を大きなスープに塞がれても、それをも飛び越えるビッグエアーで次のセクションへとラインをつなげていくことができる。17歳でコンスタントにそれができる選手は世界を探してもそうはいない。「とんでもない奴だ」と既に世界も彼の才能を認めている。

ウインドサーフィン・マガジン


Windsurfing Magazine
ウインドサーフィン・マガジン