Gran Canaria PWA Windsurfing World Cup 2022
Wave Men & Women / July 09-17 / Gran Canaria Pozo Izquierdo
Photo by John Carter_pwaworldtour.com
(7月9日~7月17日、スペイン・グランカナリア島・ポッゾ)
|| 橋本陸汰、グリグリをスムーズにやる男
▶︎U-20クラスに出場した橋本陸汰(リタ/18歳)について。2021年12月にフリースタイル種目でアマチュア日本チャンプとなりプロ資格を獲得したこと。湘南逗子をホームゲレンデに杉匠真や池照貫吾らとトレーニングを重ね、彼らとともに『Wonder Force Wang』というチームに所属し、ウインドサーフィンの普及活動なども行っていること。それ以外に僕はほとんど彼の情報を持っていない。おそらく今年の冬に御前崎で彼のライディングを目にしているとは思うんだけど、彼であることを認識して彼のライディングを見るのは、今大会の中継を通してが初めてのことだった。
だから知ったようなことは言えない。でも14分のヒートを見たなりの印象は残っている。大会6日目のU-20クラスに出場した橋本は、1回戦で石井颯太とあたり、敗退した。初めて遠征したポッゾで、初めてPWAの試合に出場し、ひとつ年下だがツアーでは先輩の颯太にやられた。けれど「仕方ない」だけでは済ませることのできない何かを僕は感じた。
まず橋本のライディングは、年齢や体格からイメージするそれよりもパワフルだった。ジャンプにもウェイブライディングにもキレがあり、演技の中に得意のフリスタトリックを織り交ぜるなど戦略的な動きも見せた。そして何より特徴的なのは、なんと言えばいいのか、それぞれの技や動きをダイナミックにグリグリやるということだ。
橋本はアクションに入る際に、適切にギアチェンジをするように動く。きっかけ的なアクションから本アクションへと動きをつないでいく。その動きは独特だが、ロボット的なものではない。そうすることによりパワーの溜めと解放が(つまりは身体を含めたウインドシステムの動きが)スムーズに行われ、それが彼のオリジナルムーブにつながっているように見える。
“グリグリ”と“スムーズ”をいい塩梅にハイブリッドさせるのは、かなり難しいことだと思うのだが、彼はそれを自然にやっているように見えるのだ。センスを感じさせる青年である。
|| 野口颯、先輩の背中が世界だった
▶︎ただいま絶賛進化中の15歳、野口颯(リュウ)くん15歳は、日本のベテランウェイバーである野口貴史プロのご子息で、普段は地元御前崎で練習している。そこは石井孝良・颯太兄弟のホームポイントでもあるので、一緒に乗る機会も多く、そんなときには年齢の近い先輩二人からいつも有益な刺激を受け取ることができる。
颯くんはお父さんの暑くて熱いサポートを受け、世界に通じる孝良・颯太兄弟の背中を見ながら、ウインド界のサラブレッド的に順調な成長を続けている。今年の冬にはマウイで合宿も張った。そしてこの夏はポッゾで修行を積みながら、今大会でPWAイベントへの初参戦も果たした。ネガティブな要素は何もない。この時期に経験すべきことをすべて経験しているといっていい。
結果も出ている。すでに風向に対する得手不得手の意識はなく、スタボーでもポートでも同じように乗れるようになっている。ビッグウェイブや爆風の経験値も高まってきており、1年前に比べて適応コンディションの幅も格段に広がっている。ダブルフォワードもメイク済みで、今はその完成度を高めているところらしい。
で、白状すると、今大会2日目、U-17クラスに出場した彼のヒートの中継を僕は見逃している。ゆえに、すみません、貴史お父さんのフェイスブックのコメントをここに引用させていただきます。「地球のほぼ裏側での大会はラウンドワンにて、バックループが決まらず、手堅くテーブルトップを決めた対戦相手に惜敗。悔しさをバネに、この実際の現場での経験を少しづつでも次に繋げるように大切な時間にしてほしいですね」
そうですね。本場で本物を見て、本気の勝負に参加することでしかわからないことがある。その稀有な財産をうまく自分なりに運用していけば、その価値はどんどん膨らんでいくはず。次はどんな颯くんが見られるか。こちらの期待も膨らむばかりだ。
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