考えない人
Text=Takayoshi “Yanmer” Yamamoto(HALE Surf & Sail_Enoshima)
春。風が変わる。風がやわらかくなる。風に匂いがつき始める。
張り詰めていた海と風に、やわらかく暖かい気配が入り混じってくる。
冬の間に硬直していた身体も少しずつほどけ始め、動きも少しずつしなやかになっていく。寒い季節に理論づくしで構築したイメージも溶け始め、もうどうでもよくなって、脳内で何かとマーブルのように交じり合い、そして自由になっていく。外が変わると内側までもがこんなに変わるか? とも思うけれど、心地いいから委ね、任せて、浸りきる。
分析なんかしちゃいけない。頭がいいことの弊害、っていうのがある。特に海の上で自分を評価しちゃダメだ。頭で考えるのは海に出る前までにして、海に出たならもうなーんも考えない。あれダメ、これダメと、自分を評価しない。
これが案外難しい。右手と左手に伝わってくる風の感触をしっかりと、意識して感じるようにするといい。それをきっかけにできれば、どんどん「世界」に入っていける。
その感覚をもっとも得やすいのが春だ。そんな季節に考えすぎちゃもったいない。やりたいことがあるのなら、できる人の後ろについてぼーっと観る。周りに人がいなければ、まあビデオでも観て、そして試そう。
夏はもうすぐ。そのあとには秋がくる。いいシーズンは長い。そう思える春が僕は好きだ。
─── 山本隆義(ハレ サーフ&セイル_江の島)
───────────── Windsurfing Magazine ────────────── ウインドサーフィン マガジン ─────────────
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_03 / 目に見えるものに、たいして大事なものはない〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_02 / ふたつのリズム〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_01 / 目標などない方がまし、かもしれない〉