THE UNIFIED PWA IWT WAVE TOUR CROWNING THE WORLDS BEST RIDERS
2023 SPICARE OMAEZAKI JAPAN CUP
Men & Women Wave / March 16-21 / Long-Beach, Omaezaki, Japan / Photo by Akihiko Harimoto
|| アマチュアウェイバー・イン・ワールドカップ
御前崎ロングビーチを見渡せる駐車場の脇にはジャッジタワーが建っている。駐車場には関係者の車が並び、各ブランドのロゴ入りテントも設営されている。テント内には世界のトップウェイバーたちの姿があり、彼らは付近を普通に歩いていたりもする。昨日この目の前の海で世界トップレベルのウェイブパフォーマンスを見せた彼らが。普段は写真や動画でしか見ることのできない彼らがだ。そこにはたとえのんびりした時間であっても、常に華やかさがあり、緊張感も漂っている。
「ここでやるのか!」そう、ここでやるのだ。世界の舞台で、世界のジャッジと世界のトップライダーたちに見守られて。
今日は『U-20クラス』『U-15 ガールズクラス』『U-15 ボーイズクラス』『マスターズクラス』ーー4つのアマチュアクラスが行われた。選手の多くは特別な環境で特別な緊張感を感じたことだろう。だがそれはほぼすべての選手にプラスの影響をもたらしたような気がする。誰もがコンディション以上の、普段の自分以上の力を発揮できたのではないか。
オンショアの風は弱めでゲティングアウトでプレーニングできない。波も小さく、その数も少ない。けれど彼らは積極的に多くの波に乗った。まるでみんなでエンプティウェイブゼロ運動を展開するみたいに。失敗もしたけれど、多くの波に自分のトラックを刻み、リップを蹴飛ばし、スプレーを飛ばした。彼らは「本気でやればここまでできる」ということをその動きによって表現した。
||「世界に誇るユース」と「ちょい渋マスターズ」
『U-20クラス』のファイナルでは、石井颯太17歳と野口颯15歳が対戦した。既に何度もワールドツアーに参戦し、年齢でも経験でも一歩先んじている颯太はさすがに安定していた。とにかくボトムターンからトップターン、あるいはリッピングへの動きが正確で、ほとんどミスをしないのだ。風が弱いためにラディカルな動きはできなかったが、それでもサーフィングでスムーズにラインをつなぎ、1本の波を最大限に利用した。その動きはまさにテキストブック・ムーブ。教科書に載せたいくらいのものだった。
颯は勢い込んでいた。気合が入りすぎていたのかもしれない。何度もボトムターンで引っ掛かって動きを止めてしまった。しかし引っ掛かるまでのフォームがカッコいい。ボードに立ったところからいきなり内傾、ガクンっと素早くギアチェンジしてレイルを入れるその形は、マウイでボトムターンを切るトップライダーのそれのようだった。結果的に今日の波のリズムとスピードにその形はミスマッチだったわけだが、あとで彼の父親である野口貴史選手に聞いたところによると、颯は「あえてその形を採っている」のだということだ。どんな波でもその形に近づけたい。それは簡単なことではないだろうが、できるようになれば強力な武器になることは間違いない。颯は自分だけの力を手に入れようと奮闘しているのだ。
『マスターズクラス』では地元の池田義隆が『御前崎ジャパンカップ』三連覇を達成した。沖でサイズのある波をゲットして、ボトムターン、トップターン(リップ)、カットバックを繰り返し、インサイドまで乗り継ぐ。波と共に移動する。そのフェイスには横長のUの字を連結させたようなトラックが刻まれていく。不自然なところがどこにもない。ロングボードサーフィンを思わせるような、リラックス感を漂わせる瞬間もある。ちょい渋マスターズ。こういう人に私はなりたい。そう思う人も少なくはないだろう。いや多いと思う。
『U-15 ボーイズクラス』1位=小西陽人(14歳)/2位=杉僚真(13歳)。『U-15 ガールズクラス』ーー1位=若狭夏希(13歳)/2位=堺希海(13歳)。4人とも湘南逗子のショップ&スクール『マリンブルー』で活動する地元の中学生だ。4人とも小学校の低学年(1年生か2年生)の時にウインドサーフィンを始めた。みんなが同じショップに所属する世界の杉匠真(僚真の兄)に憧れている。近い将来にはプロになりたいと思っている。
彼らは休日や放課後に海で遊ぶ。海に行けば、ほとんどみんなが揃っている。遊びは真剣な競争にもなり、だからこそより楽しいものになる。彼らにとって最高の環境であるウインド沼がそこにある。もう抜けられない。抜けたくないと4人は思う。
聞けば『マリンブルー』には、他にも定期的に集まるティーンエージャーが20人以上はいるという。それは驚くべきことだが、実は御前崎にも鎌倉にも(もしかしたらその他にも)そのような『ユースクラブ』が存在している。「こんなに若く才能溢れる人材が豊富な国は滅多にない」PWAツアーの重鎮ダンカン・クームスはかつてそう言ったが、うむ、その通り。日本は世界屈指のウインドユース強国なのだ。今日の彼らを見て、改めてそう思った。数年後に彼らがどのようにウインドサーフィンを楽しんでいるのか。それを思えば、僕らの胸も踊ってくるというものだ。(文中敬称略)
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