浜名湖から世界へ

守屋拓海15歳、欧州フリスタ一人旅

日本の若手が頑張っている。先のこのサイトの記事でもお伝えしたように、特にウェイブでは世界のトップ10ランカーも生まれているし、それに続く選手も出てきている。さらに、そんな彼らにくわえて、フリースタイルでも世界を目指す若手がいる。

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Takumi Moriya(J-171)Fuerteventura, Canary Islands, Spain

守屋拓海くん15歳、現在高校一年生。3年前(2019年)13歳のときに日本最年少でプロになり、その年『PWAフリースタイル・ワールドカップ / U-15クラス』で優勝。さあこれから、というときに世界がコロナ禍に巻き込まれ、しばらくは地元浜名湖の村櫛海岸でトレーニングを続けていたのだが、ここへきていよいよ世界への挑戦をリスタートさせるに至った。

7月初旬からヨーロッパへ一人旅、3カ月の武者修行に出かけたのだ。まずはスペイン・カナリア諸島のグランカナリー島へ飛び、テネリフェ島~フェルテヴェンチュラ島~テネリフェ島~トルコ~ギリシャ~オランダと、世界屈指の強風地帯とフリースタイル競技が盛んな国を巡る行程である。

その間に参戦を予定していた世界大会は3つ。❶ PWAフェルテヴェンチュラ大会(7月22日~
31日)❷ EFPTトルコ大会(8月31日~9月4日)❸ EFPTギリシャ大会(9月7日~11日)だっ
たのだが、残念ながら試合は全てキャンセルになってしまった。ヨーロッパではコロナ禍でダメージを受けた観光業が未だ立ち直っておらず、それにウクライナ戦争やユーロ安などが重なったことなどによる判断であったようだ。

やむを得ない。でも・・・特にEFPT(European Freestyle Pro Tour)───フリースタイルに
特化した欧州ツアー。年間10戦近くが行われ、世界のトップ・フリースタイラーが参戦。そのレベルは高く、PWA以上とも言われる───に参戦するとなれば、それは日本選手としては初めてのことであり、それが「どんな世界なのか?」と当人も胸を膨らませていただけに、やっぱり残念としか言いようがない。

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守屋拓海とディーター、ともに散髪、すっきり

しかしそれでも、守屋の夢のひとつは実現している。実は今回、守屋は2019年にPWA U-15クラスで優勝した時からずっと気に掛けてくれているディーター(Dieter van der Eyken / B-35=2015年PWAフリースタイル・ワールドチャンプ)に面倒をみてもらっているのだ。守屋がダメ元でオファーしたのだが「いつかワールドチャンプになってくれるなら、3カ月間何処へでも連れてってあげるよ」と、ディーターが快諾してくれたという。

二人は7月7日にグランカナリーで落ち合って、今も一緒に生活し、一緒に行動している。守屋の一人旅は、強力なサポーターとの二人旅になったわけだ。ディーターから学べることは多いだろうし、彼が身を置く環境からはたくさんの刺激を得られることと思う。まるでジュニアの選手がナショナルチームの合宿に紛れ込んだみたいな生活を送っているのではないかと思われる。

7月30日には「フェルテヴェンチュラで『セバーン』の2023年型フリースタイルボード発表会
にも参加した」という報告もあった。同じチームのディーターと、さらにフェリックス・スペンサー、フィリップ・コスター、リアム・ダンカベック、セバスチャン・コーデルら、世界のトップライダーに混じって守屋もチームライダーの一人として紹介され、ともに撮影会やスーパーセッションに参加して、テンションが爆上がりしたみたいだ。

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フェルテベンチュラで『セバーン』ニューボード発表会に参加、スーパーセッションで盛り上がる

試合はキャンセルばかりだけれど、守屋は毎日いろんな人たちに出会い、普段では経験できないことからいくつもの大事な何かを学んでいるはずだ。

それにしてもEFPTの大会がどんなものなのか、今年中に知っておきたかっただろうとは思う。なんでも今年の同ツアーの賞金総額は120,000ユーロ(¥16,462,800)と、今どきとしては高額である。日本人が知らないところでフリータイルがどのくらい盛り上がっていて、世界のトップパフォーマンスがどこまで引き上げられているのか、一度その目で確かめておきたかったに違いない。来年はこのEFPTに少し多めに参戦するというのが守屋の目論見だ。「いいニュースが届けられるように頑張ります」と当人は言ってる。日本選手にとって「最も遠い世界」と言われているフリースタイルで守屋がどこまで行けるか? 今後も注目していきたい。


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グラン・カナリア島の首都ラス・パルマスで
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テネリフェ島、例年PWAのウェイブコンペが行われる海岸で