東京 2020 オリンピック

東京五輪公式艇『RS:X』とは?

|| オリンピック公式艇の変遷

ウインドサーフィンが初めてオリンピックの正式種目に採用されたのは1984年。世界的ブームとともにロスアンゼルス大会に登場したその真新しいウォータースポーツは、五輪の華のひとつとして輝き、広く世間の耳目を集めた。以来37年、ウインドサーフィンは10大会連続でオリンピック種目であり続けているわけだが、時代の要請やテクノロジーの進化により、これまでに4度、公式エキップメントが変更されている。

1)WINDGLIDER(ウインドグライダー:ボード=390×65cm / セイル=6.5㎡)1984年ロサンゼルス五輪 ※ハーネスの使用は不可。男子のみの開催。

2)LECHNER(リヒナー:ボード=390×63cm / セイル=7.3㎡)1988年ソウル五輪、1992年バルセロナ五輪 ※’92年大会より女子クラスも開催。

3)IMCO(International Mistral Class One-design_イムコ:ボード=372×63cm・15kg・235ℓ / セイル=7.4㎡)1996年アトランタ五輪、2000年シドニー五輪、2004年アテネ五輪 ※日本学生ボードセイリング連盟の公式艇にも採用されていた。

4)RS:X(アールエスエックス:ボード=286×93cm・15.5kg・231ℓ / セイル=男子9.5㎡、女子8.5㎡)2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪、2016年リオデジャネイロ五輪、2020東京五輪 ※’90年代から劇的に進化したレーシング系ウインドサーフィンギアとのギャプを埋めるため、ボードに中・強風下での高速プレーニングを実現するショート&ワイドデザインが採用されている。

『RS:X』Board & Sail (※ボードのグラフィックなど、年式によって異なる部分もある)
『RS:X』Board & Sail
(※ボードのグラフィックなど、年式によって異なる部分もある)

オリンピックでは公平を期すために、すべての選手が同じ道具(ワン・デザイン・エキップメント)を使用しなければならない。その上で、スケジュール通りに競技を成立させる必要がある。無風だから微風だからと簡単にレースをキャンセルするわけにはいかない。だからこれまでオリンピックのウインドサーフィン・クラスには、ライトウインドでも走れる(頑張れば走らせることができる)道具が選ばれてきた。

「微風でも走れること」を考慮して開発を進めれば、そのぶん道具は大きくなり、重量もかさんでくる。そうなれば当然強風での扱いが難しいものとなり、最適風域は狭くなる。公式エキップメントの変更は、その弱点を埋めるために行われ、着実な改善が成されてきたのだが、微風から強風まですべてのコンディションで100%の道具は未だ存在しない。故に選手らは状況に応じて、道具とも戦いながらメダルを目指して走ることになる。

風と海面と道具と自分、すべての調和を図るには多くの場面で高いスキルとパワーが必要になり、長いレース(今回の東京大会では全12レース+メダルレースの予定)を走りきるには、当然強靭な精神力も要求される。タフな勝負だ。今オリンピックにおけるレースも力感に満ちたものになることは間違いない。選手の必死の力走や、精魂尽き果てた表情も、激しい戦いを物語るものとして見るものの心を震わせることになるだろう。

────────────── Windsurfing Magazine ─────────────── ウインドサーフィン マガジン ──────────────