ひとつの動きにこだわらず、新しい流れを模索する

1998年、6歳のときにカイ・レニーはウインドサーフィンを始めた。当時はキッズ用の道具がほとんどなく、カイは憧れていたロビー・ナッシュに手紙を送った。「僕でも乗れるセイルが欲しいです。ぜひスポンサーになってください」それがきっかけで『ナッシュ』はキッズ用のエキップメントを開発し、カイは同ブランドのライダーとして採用された。

カイはその頃から将来を嘱望されていた。ウインドサーフィン界の帝王ロビーは、間近で彼の成長ぶりを確認していくなかで、誰よりもはっきりとカイの未来の姿をイメージしていたに違いない。

以下、カイが15歳のときの言葉である。

▲カイ・レニー_Kai Lenny(US-1112)両親に倣って6歳でウインドサーフィンを始める。ロビー・ナッシュに憧れ、彼に師事してウインドサーフィン、サーフィン、カイト、SUPなどの腕を磨き、15歳のときにはホキーパのダブルマストオーバーの波をメイクして「ウォーターボーイ」と呼ばれる存在に。現在はフォイルサーフィン、ウイングフォイルなども含め、ほぼ全てのウォータースポーツでトップパフォーマンスをみせる「リアル・ウォーターマン」として世界に認められている。1992年8月10日、ハワイ・マウイ島生まれ、28歳/ⒸGoya Windsurfing
カイ・レニー_Kai Lenny(US-1112)両親に倣って6歳でウインドサーフィンを始める。ロビー・ナッシュに憧れ、彼に師事してウインドサーフィン、サーフィン、カイト、SUPなどの腕を磨き、15歳のときにはホキーパのダブルマストオーバーの波をメイクして「ウォーターボーイ」と呼ばれる存在に。現在はフォイルサーフィン、ウイングフォイルなども含め、ほぼ全てのウォータースポーツでトップパフォーマンスをみせる「リアル・ウォーターマン」として世界に認められている。1992年8月10日、ハワイ・マウイ島生まれ、28歳/ⒸGoya Windsurfing

「新しい動きをマスターするとき? 楽しいという気持ちを持ち続け、絶対にもっと上手くなると強く思い続けて精一杯努力する。周りの人からのアドバイスを素直に受け入れて実践してみる。僕の場合はロビーや(ウインドサーファーである)父の意見がすごく貴重なものになっている」

「学校にいる時間以外はできるだけ海で(主にホームポイントであるマウイ島のホキーパで)過ごすようにしている。でも大事なのは海に入っている時間ではなく、セッションの内容で、5時間入っても何の収穫もないこともあれば、たった30分のセッションが濃密になることもある」

「イメージトレーニングは大切だけど、あまり深く考えないようにもしている。ウインドサーフィンは自然の動きに自分の動きを合わせていくものだから、自分勝手に練習できないものだからね。だから流れのなかに自分がマスターしたい動き、技を取り入れて繰り返す。そのうちにコツが掴めてくるというのがいつものパターンで、何かひとつの動きに集中してやり続けるということはしないんだ」

「上手くなるには道具にしてもライディングにしても、自分の感覚だけに頼るんじゃなくて、経験のある上手いウインドサーファーに客観的にチェックしてもらうこともすごく大事だよ」

「ロビーにはすべて、海のこと、ウインドサーフィンのこと、メンタルや人間性についてまで、いろんなことを教えてもらった。僕にとってロビーはゴッド、神のような存在なんだ」

「僕のゴールは本物のウォータマンになること。ウインドもそうだけど、サーフィン、カイト、SUPなど、あらゆるウォータースポーツで、トップと認められるタフなウォーターマンになること。それこそロビーみたいな、最強のウォーターマンにね」

カイは28歳になった。すでにサーフィン、ウインドサーフィン、カイト、SUP、さらにはフォイルサーフィン、ウイングフォイルなど、ほぼすべてのウォータースポーツのトップアスリートとして世界に認められ「若きレジェンド」と呼ばれるほどの重みのある存在になっている。

ロビーは57歳になった。カイは今もジョーズの大波をメイクするなどトップアスリートであり続けるロビーをリスペクトし、今ではロビーもカイをおおいにリスペクトしている。二人のセイルナンバーは、ロビーが『US-1111』でカイが『US-1112』だが、その数字のつながりは余人が入り込めない絆の強さを示すものであるようにも思える。

とにかく二人はこの世界の頂点でつながり、それぞれが別の領域にあるさらなる高みを目指している。海の上での偉業や冒険は、二人によって次々に(こちらの感覚的にはほぼ間断なく)達成され、そのたびに世の注目をウォータースポーツに引きつけている。

ロビーとカイが出会ったことは、ウインドサーフィンにとって、ウォータースポーツにとって幸運だった。きっかけから考えれば、カイが引き寄せた喜ばしい運命だったのかもしれない。

二人は今もウォータースポーツの歴史を固め、その限界を引き上げ、未来を拓き続けてくれている。プリミティブでリアルでフィジカルでスピリチャルでポジティブな刺激を拡散し続けてくれている。普段は漠然としがちで実感しにくいものを、その行動をもって現実化・可視化してくれている。

ゴールがないことはわかっている。それでも、だからこそ、二人はいつも自然の流れのなかにいて、あと一歩もう一歩と、勇敢にしかし慎重にその深奥に近づこうとしている。その姿勢が多くのウインドサーファーのプライドとモチベーションを高め、人が自然の一部になることの難しさ、素晴らしさを広く伝えるメッセージとして機能している。

トップに二人のようなリーダーがいる世界にいることを嬉しく思う。

EVERY WIND SPORT AT HO’OKIPA IN ONE DAY // 20@20 Episode 1
▶︎https://www.youtube.com/watch?v=xnwv47UQqEc&t=440s

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