石井颯太連続優勝、松井晴も4位に_PWAテネリフェ大会

PWA WORLD TOUR 2019
EVENT_08 / Wave Men & Women #2
August 05-August 11 / El Medano, Tenerife, Canary Islands, Spain
All Photo by John Carter_pwaworldtour.com
速報 “J-ボーイズ” またも世界を驚かせる

(PWA ワールドツアー・テネリフェ・ワールドカップ/8月6日、大会2日目)
7月の聖地ポッゾでの大会(7月16日の記事参照)に続き、カナリー諸島シリーズ最終戦・テネリフェ大会で日本のジュニア・ウェイバー二人がまた素晴らしい結果を残した。とんでもない快挙である。なぜなら、どちらかといえばポッゾはジャンプがメインとなる世界の強風ポイントであり、一方テネリフェは強風ポイントでありながら、比較的波がまとまりやすく、大会ではウェイブライディングが重要視される傾向があるからだ。その両方で若い二人は躍動し、あるいは超回復的な立ち直りを果たして世界を驚かせてみせたのだ。

Hayata Ishii(J-775)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com
Hayata Ishii(J-775)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com

▶︎石井颯太(14歳)=先のポッゾ大会でPWA初参戦を果たし、U-15クラスで初優勝を遂げた。それは他を寄せ付けぬほどの圧勝だった。だが今回は違った。4人で行われたファイナルで、石井とトビアス・ビオーナ(ポッゾ大会2位)さらにはカルロス・キンタナの3人が13.5ポイントで並んだのだ。この場合ベストウェイブポイントが高い者が勝つのだが、ここでも石井とトビアスは同点、結果セカンドウェイブポイント4.5対4.0で、石井がトビアスをうっちゃる形で優勝した。

つまり石井は、ポッゾで圧勝しテネリフェで接戦を制した。同じ強風ポイントでありながら、実はコンディションを異にする2つのポイントのどちらでも勝てることを証明した。この年代では世界トップのオールラウンド・ウェイバーであることを世界に知らしめ、自らの内にある勝ち方の引き出しをまたひとつ設えた。もしかしたら、もう勝ち癖もついているかもしれない。

Haru Matsui(J-816)/ ⒸJose Piña
Haru Matsui(J-816)/ ⒸJose Piña

▶︎松井晴(14歳)=ポッゾ大会では第1ラウンドで負けた。「緊張とアンダーセイルで思うように動けなかった」だが今回は違う。ファイナルに進出し、思い切り暴れた。いや暴れようとしたところで、マストを折ってしまった。結果は4位。悪くない。14歳でU-17クラス4位なのだ。全然悪くない。立派だ。「来年はてっぺんに立てるように頑張ります」

頑張って、君なら立てる、と僕は思う。彼とは少ししか話したことがないのだが、それだけでも素直な性格だろうことがすぐにわかった(ような気がした)。まっすぐな少年。それだけに壁のようなものにぶつかることもあるかもしれない。ポッゾではその壁にぶち当たり、心が折れた。だがテネリフェですぐに立ち直った。骨折から回復した骨みたいに、彼の心は前よりも強くなり、その相乗効果でウインド力も向上しているに違いない。

Hayata Ishii(J-775)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com
Hayata Ishii(J-775)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com

恐ろしい14歳、驚異のジュニア。つい数年前まで、そういう選手は海外にしかいなかった。日本では「彼ら」の存在を羨むことしかできなかった。だが今は逆だ。世界が日本に注目している。日本には世界ツアーの中で既に名の知れた杉匠真や石井孝良がいる。それなのになぜ、孝良の弟である颯太や松井のような若手が続々と現れるのか? 日本にはそんなに風が吹き、波が立つポイントがたくさんあるのか?

違う。日本はおそらく世界一ジュニアライダーの育成に本気なのだ。御前崎や逗子や浜名湖などでジュニア育成プログラムが開発・更新され、先輩キッズたちが後輩キッズたちを引っ張る状況も生まれている。海外(例えばポッゾなど)でのウインド合宿も珍しいことではなくなり、多くの親御さんやサポーターたちが彼らの成長を強力に後押ししている。そして「彼ら」が本気で世界一を目指せる環境が着々と整いつつある。

テネリフェではこのあと、プロクラスのヒートが始まる。既にワールドツアーのユースクラスで優勝経験のある杉匠真と石井孝良は、それぞれまだ17歳と18歳のユース世代でありながら、世界のトップライダーの(48名中の)一人としてそのクラスに出場する。「彼らはまだユースだから」と思われているかもしれないが、二人にはそういう意識はさらさらないと思われる。「一生懸命頑張ります」という二人の言葉は「アップセット(番狂せ)を狙っています」というように僕には聞こえる。そう思えることを本当に嬉しく思う。

Haru Matsui(J-816)/ ⒸJose Piña
Haru Matsui(J-816)/ ⒸJose Piña

日本には先輩たちが「世界で何をしでかすか」を注視するウインドキッズがたくさんいて、彼らを眩しく見つめながら、必要なときには背中をポンと押してあげたいと思っている大人たちもたくさんいる。そういうウインドカルチャーが根付きつつあり、その影響力が年々広がりをみせている。いや本当に、日本のウインド界はなんだかすごいことになっている。

おっと、そろそろ杉匠真と石井孝良の出番かもしれない。さあ行け、頑張れ。みなさん注目してください。

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U-15 Podium, 1st.=Hayata Ishii(J-775)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com
U-15 Podium, 1st.=Hayata Ishii(J-775)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com
U-17 Podium, 4th.=Maru Matsui(J-816)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com
U-17 Podium, 4th.=Maru Matsui(J-816)/ ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com

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U-17クラスで優勝したのは百年王者ビヨン・ダンカベックの子、リアム・ダンカベック。日本のユース選手にとって、これから長く競い戦い続けるライバルの一人になるだろう / ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com
U-17クラスで優勝したのは百年王者ビヨン・ダンカベックの子、リアム・ダンカベック。日本のユース選手にとって、これから長く競い戦い続けるライバルの一人になるだろう / ⒸJohn Carter_pwaworldtour.com