波の道を見つける 》

リオ五輪のカヌー競技で日本人初のメダリスト(銅)となった羽根田卓也選手がこの前テレビで言っていた。カヌーの技術で一番大切なのは「水の流れを掴む能力です」と。
同じようなことを言ったウインドサーファーがいる。
グラハム・イジー。去年の3月、御前崎で行われた『ワールドパフォーマンス』に出場していた彼は、大会の空き時間にこう言った。

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Photo by pwaworldtour.com_John Carter Photography

「ウェイブで一番大事なこと? ちょっと考えさせて・・・。そうだね、一番大事なことは波に合ったラインを見つけること。そしてフロー(flow / 流れ)を作ること。僕はそれができて、波とつながりがもてたと感じたときに一番の喜びを感じる。そのためにはパワーやリッピンングも必要になるけれど、それがなくても波と一体になってさえいれば、ただクルージングしているだけでもとても楽しい」

そのラインの見つけ方を教えてください、と僕は言った。「近道はない」とグラハム答えた。それはそうだろう。波の上にはいくつもの道があるようにも見えるし、道などないようにも思える。それでもいくつもの道を探ってみなければ、本当の道がどこにあるかはわからない。グラハムは言う。

「とにかくいろんな波の上で、できるだけ長い時間を過ごすこと。ターンにしろトリックにしろ、波のリズムやフローを理解していなければ、それなりの動きしかメイクできない。波はサインを出している。一番わかりやすいのはボトムからのサインだ。そこがタイトに張っていれば、リップは崩れる寸前にある。それがわかればリップを見る前に動いていける。波とシンクロできるようになると、そういうことがいろいろとわかってくる。感じられるようになってくる。そうなるために大事なことは、自分を禅の状態(たぶん無の状態)にすること。頭で考えようとすると、確実に波に遅れをとるからね」

「大切なものは目に見えない」『星の王子様』のサン・テグジュペリも言っている。そしてグラハムもブルース・リーも「考えるな、感じろ」と言う。そうだよな、と僕は思う。すべてが具体的でわかりやすいもので成り立っているのなら、この世界はもっと整理されているはずだし、すっごくウインドが上手い人とそうでない人との差も、もっと小さくなっているに違いない。見えないけれど大切なものは確実にあって、やりようによってはそれを感じられるようになる。そう思って波の上で無になれれば、何か想像もできないことが起こるかもしれませんね。
▼Photo by Tabou_John Carter Photography

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▲Graham Ezzy(USA-1)2004年PWAツアーにデビュー。クラシカルなラインと360やタカなどを見事に融合させる、最先端のハイブリッドライダー。 米国を代表する名門校『プリンストン大学』でイギリス文学を学び、思索、文筆、読書も愛す。 2016年PWA『アロハクラシック』9位。マウイ島・ハイク在住。27歳。