【WSF Interview_09_穴見知典 / JPN-60】
《 日本の壁の向こうへ 》
穴見知典_2016年PWAスラローム・シリーズ_リザルト
第一戦・韓国=33位(33T)
第二戦・スペイン=不参戦
第三戦・フェルテヴェンチュラ=不参戦
第四戦・デンマーク=58位(39T / 39T)
第五戦・ドイツ=不参戦
▶︎年間ランキング=59位
※カッコ内の数字は各レースの順位。
───「スポーツのスーパースターになるための条件のひとつは、肉体的なピークを迎える前に10年間のトレーニングを積むこと」という説がある。穴見知典は、まだ二十歳になったばかりだが、すでにその条件を十分に満たしている。若いだけではなく、年相応以上の経験があり、さらにこれからの経験をより分解吸収しやすい状態にあるということだ。
もちろん、それだけですべてがうまくゆくというわけではない。だが、穴見は多くの可能性を秘めている。日本のレース界に久々に現れた若き希望だ。
───あなたのスラローマーとしてのストロングポイントはどこにあると思いますか。
それとは逆に自分で認識している弱点はありますか。
穴見 強みは若さです。まだこれというアドバンテージは見つからないけれど、若さという点では負けていない。失うものなど何もないので、後ろを見ずに突っ走れる。他の種目に比べてスラロームは比較的平均年齢が高いので、それを武器にしなくちゃいけないと思っています。
弱点は経験不足、ですね。スタートが下手だったり、レース中の位置取り、コース取りに無駄が多いのが現状です。
───あなたにとって一番のライバルは誰ですか。
穴見 (日本の絶対王者)浅野則夫さんです。まず日本の壁である則夫さんに勝たないと世界の壁は見えてこないと感じています。
───2015年にPWAツアー(世界)にデビューして、足りないと感じたこと、学んだことなどはありますか。
穴見 圧倒的な差を感じました。日本のレースとは比較にならないほどの衝撃でした。世界のトップスラローマーの走る姿や雰囲気、道具のチューニングの仕方や考え方などを直に感じて、今のままではダメだということをはっきりと自覚させられた。でも、それは大きな収穫です。早く間違いに気づけてよかった。今は道具のことや走らせ方など、世界をイメージしてトレーニングしています。
───今季のレースのイメージは? 何が必要かなどを含め、できるだけ具体的にレースプランを聞かせてください。
穴見 目標はジャパン・サーキットではコンスタントに5位以内。PWAでは2回戦突破(クォーターファイナル進出=ベスト16入り)。
今季は韓国と日本、それからもう一つ、3つのPWAイベントにエントリーしようと思っています。このオフシーズンのあいだに乗り方も変えて、少しは速くなっていると思うので、目標以上の成績を残せるようにガンガンいくつもりです。勢いと柔軟な思考をもって、それから冷静な分析も忘れずに。
───穴見さんが、アスリートとしての総合力を高めるために大事にしていること、あるいは日々を過ごすなかでの優先順位、ルーティンなどがあれば教えてください。
穴見 大事なことは考えること。ただがむしゃらに乗るだけではなく、考えて練習するようにしています。
───5月の『横須賀W杯』の目標と、日本のファンにむけてのコメントを頂けますか。
穴見 2回戦突破! 日本選手の中でのトップリザルト。若さがアドバンテージになるように、出し惜しみなく、本当に全力で挑みます。応援よろしくお願いします。
───最後にもうひとつ。まだ二十歳の穴見さんは未来にどんなイメージを描いていますか。短期、中期、長期に分けて教えてください。
穴見 先ずは浅野則夫さんを倒す。次に世界で活躍。最後に世界一です。
───穴見は恵まれている。近くに浅野則夫という目標がいて、その壁の厚さや高さを実感できる。浅野は19歳で日本チャンプとなり、以来25年以上も日本のレースシーンを牽引しているこの国の絶対王者だ。穴見は浅野の背中を見て多くを学べる。しかし、浅野を越えるのは簡単なことではない。というか、極めて困難なタスクに今は思える。なぜなら浅野はすでに世界の一部であるからだ。「その壁を越える」と穴見は言う。頑張れ。