ウェイブで「小柄」は「弱み」になりませんか?
10年前、日本選手の中に「ワールドカップでヒートを勝ち上がれる」と予想のできるウェイブライダーはいなかった。そもそもツアーに参戦する選手が少なく、たまにスポット参戦してみたところで、簡単に勝てる世界ではないからだ。それでもたまに日本選手が出場すると「もしかしたら」と胸が踊った。けれど、すぐに「やっぱり」と消沈した。
僕らはそのあと、日本選手がいなくなったヒートに、日本選手に近い体型の外国人選手を探したものだった。なぜ彼らは勝てるのかを考察するためだ。世界には体型が細身でも背丈が高くなくても凄い選手が少なくなかった。彼らのようにツアーにフル参戦する選手が出現すれば、日本にもトップウェイバーが生まれる可能性はあるのだろうか?
2011年、マウイで行われた『アロハ・クラック』の会場で、世界の中では小柄な二人、ジョシュとボジュマは、僕らの疑問に次のように答えてくれた。
Q:ウェイブで「小柄」は「弱み」になりませんか?
▶︎ジョシュ・ストーン「ウェイブに限らず、ウインドサーフィンでは様々な『効率』が求められる。例えばそのひとつの指標が『パワーウエイトレシオ』だ。車でいえば車重に対する馬力の大きさのことで、同じ馬力のエンジンなら車重が軽い方が加速力に優れる。つまり身体が大きくないセイラーは、パワーウエイトレシオが高くなるケースが多いから、むしろ有利な面が多い。
例えば僕の場合は、より早くボードをプレーニングさせることができるから、小さめのボードに乗ることができ、波の中で動きやすい。ただハードな技、例えばタカスライドなんかをやろうとしたときには、身体の大きなパワー系ライダーが有利にはなるけれど。まあそこはそれ、体格なりに長所と短所はあるものだから、トレーニングで補うしかないよね」
▶︎ボジュマ・ギロール「ウェイブに大きい身体が必要だとは思わない。でも脚力はいる。マーク・アングロやリーバイ・サイバー、ブラウジーニョらの動きは、その脚力によってボードをコントロール下におけるからこそ実現できるものなんだ。僕の体重は65キロで、最適で、維持しようと思っている。その上でもう少し脚力をつけようとしてるんだ」
今も世界には ─── 2019年PWAウェイブランキングのトップ10内を見ただけでも、4位アントワン・マーチン、6位トーマス・トラベルサ、7位ジェイガー・ストーン、10位アレックス・ムッソリーニなど ─── 大きくはないけれど強い選手が結構いる。
10年前と違うのは、そのグループに食い込んでいきそうな日本の若手選手が複数いて「世界一を目指す」という彼らの声が真実味を帯びて聞こえてくるということだ。その彼らに憧れて、彼らに続き、追いつこうと血眼になっている若手も多い。彼らはみな、日本人は世界で勝てないなんて思っていない。「やればできる!」と信じさせてくれる先輩や仲間がいて、そのためにはどうすべきかについての具体的なモデルケースも既に学んでいるからだ。
若手だけではない。日本の多くのアマチュア・ウェイブライダーたちも気づき始めている。もしかしたら無意識のうちに諦めていたことがあるかもしれないけれど、いやまだまだ自分にも伸び代があるはずだと。10年前のジョシュやボジュマの言葉が、いま日本全国で証明されようとしている。「やればできる!」みなさん、頑張ってください。
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