《ANA 横須賀W杯_2017年5月11日開幕まで_あと98日》

【WSF Interview_06_レナ・アーディル / TUR-33】
《 弱点から生み出した強みとは? 》

レナ・アーディル_2016年PWAスラローム・シリーズ_リザルト
第一戦・韓国=1位
第二戦・デンマーク=3位
▶︎年間ランキング=2位

────この五年で四度、年間トップ3の一人になった(プロフィール参照)。去年は風の外れ年で、シーズン二戦で3レースしか成立しなかったのだが、そのうちの2つのレース(韓国1 + デンマーク1)でトップを獲った。
だが残りのひとつ、デンマークでの7位フィニッシュが最後に響いて、惜しくも王座を奪取することはできなかった。
レナは誰もが認める世界のトップ・スラローマーである。けれど一度も年間タイトルを獲ったことがない。横綱級の実力はあるのだが、なかなか横綱には推挙されない。そんな感じで見られているような気がする。

「レナは安定している」とよく言われる。「安定」は艇速に欠けることを言わずして(隠して)選手を褒める場合にもよく使われる言葉だが、レナの場合は違うだろう、という気が僕はする。実際に彼女の走りを見たことはないわけだけど・・・。

Ⓒpwaworldtour.com_John Carter Photography
All Photo by pwaworldtour.com_John Carter Photography

────あなたのスラローマーとしてのストロングポイントはどこにあると思いますか。それとは逆に自分で認識している弱点はありますか。
レナ・アーディル(以下:LE) 私の強みはジャイブ。マーク付近がどれだけ混乱していても、行くべきラインを見抜き、かなりの確率でそこを抜けていくことができる。たぶんそのスキルは、私の弱点のひとつが常にスピードにあることから生まれたものだと思う。もっと速くなること。それは今でも私の課題だけれど、最近は経験が力になっているとも感じている。もう何年も強敵と競い合ってきたから、この状況ではどうするの、というときに、瞬時に的確な判断を下せる。本能的に行動できるようになっていると思います。
────あなたにとって一番のライバルは誰ですか。
LE この五年間、私はずっとデルフィーネとサラキタと表彰台の場所取り争いをしてきた。二人が一番の強敵であることは間違いない。才能溢れる二人と走れば、レースは常にエキサイティングなものになる。でも、二人だけをマークしていればいいというわけじゃない。今トップ10に入っている選手は本当に強い。みんな可能性のある走りをする。だから気を抜けるレースはひとつもない。
────一昨年は3位、去年は2位でしたが、今年チャンピオンになるために何が必要だと思いますか。来季のレースプランを聞かせてください。
LE 来季はPWAツアーはもちろん、トルコのツアーにも参戦する。目標は変わらない。常にベストを尽くして、勝ちにいくこと。どんなにライバル達が強くても、どんなにタフな戦いになろうとも。私は去年PWAで行われた3つのファナル(韓国1 + デンマーク2)で二度(韓国1 + デンマーク1)勝利している。もうレースに勝てることはわかっている。あとはいい風の中で大会が成立するのを祈るのみ。
────日本のレーサーで驚異に感じる選手はいますか。
LE お世辞抜きに日本の女子は強い。(穴山)未生、(鈴木)文子、大西(富士子)は、この数年多くの大会に参加して経験も積んでいる。勝つために必要なものを持っているように思える。特にスピードはかなりのもので、彼女らにも何か光が見えているんじゃないかな。
────この5月には日本で『横須賀W杯』が開催されます。
最後に日本のファンに向けて、何かコメントを頂けますか。
LE 私は去年ニューカレドニアに行く途中、三日間だけ日本で過ごしました。それで東京と日本の文化が大好になった。そのときに(横須賀)のウインドサーフィン・ショップ『ティアーズ』に立ち寄って、今度の大会会場(津久井浜)をチェックすることもできた。フラットな海面にいい風が吹くスポットだという印象です。
日本なら大会は間違いなく、うまくオーガナイズされることでしょう。できればウインドをしない多くの人にも関心をもってもらえるイベントになることを願っています。来春日本で会いましょう。

────「トップ3はレベルが違う」と実際にレナの走りを見、レナとレースをした国枝信哉プロや須長由季選手も言っている。そのうちの一人であるレナは、ただ「安定」しているのではない。たしかにその艇速はトップとは言えないのかもしれない。だがそのことを自覚してジャイブの技術を磨き上げたことで、アプローチでの減速を抑え、迷いなくラインを見極めて、容易に加速しやすい速度で脱出するマーキング・スキルを身につけた。つまり、直線スピードの不足分をカーヴィング・スピードで補って(両方を継ぎ目なくつなげて)トータル・スピードを向上させたということだ(たぶん)。
レナはおそらく、最もノッキング(減速時、低速走行時の道具の振動)を抑えてレースコースを走りきれる選手の一人なのではなかろうか。
だから「安定して速い」のだ、きっと。
『横須賀W杯』でそのことをたしかめたいと思います。

▲Lena Aylin Erdil(TUR-33)1989年生まれ、28歳。ドイツとベルギーで育ち、イングランドの名門サセックス大学で哲学と政治を学ぶ。レースを始めたのは15歳のときで、翌2005年にはトルコ・ジュニア・チャンピオンに。'06年PWAツアーにデビュー。'11年、アルーバの大会でツアー初勝利。同年レッドブル・チームの一員に。トルコ南西部ボドルムに『レナ・アーディル・ウインドサーフ・センター(2007年設立)』を運営。'12年から'16年までのPWAスラローム・世界ランキングは3位、7位、2位、3位、2位。トルコ、イズミル県、チェシメ在住。
▲Lena Aylin Erdil(TUR-33)1989年生まれ、28歳。ドイツとベルギーで育ち、イングランドの名門サセックス大学で哲学と政治を学ぶ。レースを始めたのは15歳のときで、翌2005年にはトルコ・ジュニア・チャンピオンに。’06年PWAツアーにデビュー。’11年、アルーバの大会でツアー初勝利。同年レッドブル・チームの一員に。トルコ南西部ボドルムに『レナ・アーディル・ウインドサーフ・センター(2007年設立)』を運営。’12年から’16年までのPWAスラローム・世界ランキングは3位、7位、2位、3位、2位。トルコ、イズミル県、チェシメ在住。