先の『アロハクラシック』で、会場MCのカイ・カチャドリアンは、ブームの高さを話題にしていた。高くつけるか低くつけるか、それでスタイルが変わってくる、みたいなことを。僕は英語が得意ではないし、彼は早口なので、何を言っているのかわからなかったけれど、そういえば、と思い出したことがある。もう10年以上も昔のことだけど、ジェイソン・ポラコウはすごく高い位置───セイルのカットオフぎりぎり───にブームをセットしていた。なぜか? その理由を何人かの有識者(誰だったかな?)に訊いたことがある。

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Jason Polakow(KA-1111)Ⓒpwaworldtour.com_John Carter Photography

以下、僕が有力だと思った説について。
当時は道具もジェイソンも(今よりも切実に)スピードを求めていた。だからジェイソンはレーサーのようにブームの位置を高くした。スピードが上がれば水面は硬くなり、ボードの反発力は強まる(水切り遊び=石切りの石と同じ)。そのスピードのままボードを抑え、ターンでフェイスにレイルを咬ませるなどするには、身体のパワーだけでは足りない。セイルのパワーを利用しなければ、ボードの挙動を安定させるのは難しい。

例えばボトムターン。ブームを高くしてセイルを引き込むと、グッと胸が入る。身体がセイルに近づく。身体とセイルがシンクロする。逆にブームが低いと、腕だけでセイルをトリムしようとする意識が強くなるので、セイルと身体の動きが別々になりやすい。セイルが前に出て、身体が残り、インレイルへのプレッシャーが不足して、はいそれまでよ、ということになりやすい。

トップターンの時にも同じようなことが起こる。身体を捻る力を利用して、スパンッとレイルを切り替えそうとするその時に、ブームが高ければ身体とともにマストを前に出しやすいが、低いとマストが後ろに残りやすい。結果、トップターンにキレがなくなる。

当時はジェイソンだけでなく、フランシスコ・ゴヤもジョッシュ・アングロも、トップライダーの多くがブームを高くしていた。そうすることで──懐が狭くなることによるデメリットが生じることも覚悟して──身体とセイルの一体感を強め、スピードに対応していた。

今はどうか? 上の写真をご覧ください。ジェイソンのブームの位置は少し低くなった。(下の写真の)カウリなんかもまあまあ低い。でもジョッシュやサラキタは未だにすごく高い位置にセットしている。道具のスピード性とコントロール性が高まったことで、ブームの高さとは関係なく、一体感を保ちやすくなり、ラディカルに乗れるようになった、ということだろう。だがそれでも低い人もいれば高い人もいる。彼らの中に、てきとーな位置にブームをセットして、てきとーなスピードで、てきとーに乗っている人はたぶんいない。みんな自分の位置を探して、その位置で乗っている。やはりブームの高さひとつで何かが変わる、ということだ。

本格的なウェイブの季節になりました。簡単に試せるチューニングのひとつとして、ブームの位置を探してみるのもいいかもしれませんね。

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Kauli Seadi(BRA-253)Ⓒpwaworldtour.com_John Carter Photography
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Sarah-Quita Offringa(ARU-91)Ⓒpwaworldtour.com_John Carter Photography