ウインドサーフィン・エッセイ_08

非生真面目のススメ
Text=Takayoshi “Yanmer” Yamamoto(HALE Surf & Sail_Enoshima)

すごくいい写真や、あるいは動画の素晴らしい一場面を見過ごしてしまうことがあります。すべてが何気なく溶け込みすぎているからでしょうか。ウインドサーフィンは「自然と人と道具のシンクロ」その同化率を高めることが大切だと言われますが、いい写真や動画はそのシンクロ率が高い。だから、それゆえ‥‥。

ところで「自然とシンクロする」「自然に合わせる」とは、どういうことでしょう。ウインドサーファーなら何となくは感じているはずです。でもはっきりとはわからない。僕もそうです。ただこれまでに何度か「これか?」と感じたことはあります。以下そのことについての私感です。

自然に合わせる動きは、スピードを上げようとする時や、思い切りスプレーを上げようとする時などの動きにもつながっていくものです。だから「自然に合わせる=上手くやる」「=とにかく楽しむ」という方向に思いが傾いていきがちです。
でもそれってちょっと違うかも。だってそれだと「合わせる」というより「自己中心的」な感じがしませんか?

Thomas Traversa(F-3)/ ⒸArmand Dayde_GA Sails & Tabou 2021
Thomas Traversa(F-3)/ ⒸArmand Dayde_GA Sails & Tabou 2021

以前江の島の西浜で台風の波に乗ったときのこと、未熟な僕は久しぶりのポートサイドの風に戸惑いました。あれっ、上手くいかない、どうやるんだったっけ、上手くやらなきゃ。そんな思いが次々に湧き上がってきたものです。この感覚はたぶん悪いものではありません。こういう場合の第一段階としては当然で、むしろ大切にすべきものだと思います。

で、このプロセスを越えると、やがて第二段階が訪れます。「そうそう、このパターンの場合はこうだったよな」というように、ベースになる動きやライン取りなどが思い出されて、それに合わせて動きを修正していくようになり、ライディングがリズムに乗っていくようになります。

わかりますか? 第一段階から第二段階へと進む過程で(僕の場合は)意識が自分から自然へとシフトしていきます。この先に第三段階はありません。あるのかもしれませんが、僕の場合はほとんど何も考えなくなります。一種のトランス状態に入る、ということなのかもしれません。この状態に入ってしまえば「こっちのもの」という感じですべてがいい方向に進んでいくのですが、しかしいつもそこに辿り着けるとは限りません。というか、途中でいろんな失敗をしたり、苛立ったりで、なかなかそこには辿り着けないのが普通です。

そんな時にはどうするか? 自分を責めたり、反省したりはしないようにしています。ただ放っておきます。経験上、反省なんかすると爽快感を得にくくなると思っているからです。だから失敗して落ちても、それをひとつの動き、何かのプロセスとして捉えるようにしています。───そんな時、近くに仲間がいてアドバイスなんかしてくれたら最高です。「へー、なるほど、じゃあ次はこうしてみるか」みたいな感じで、どんどん盛り上がっていけます。一人でいる時にも「もっともっとー」という感じで自分の中に流れを作っていくと、多くの場合それがポジティブな作用をもたらしてくれます。

「もっともっとー」? それがどういう意味なのか、自分でもはっきりしません。でも「もっと上手く」ではないことは確かで、たぶん「おい、オレ、もっと感じろー」みたいなことなんだろうと思います。この感じ、なんとなくでもわかってもらえるといいんだけれど。

とにかくウインドサーフィン、あまり生真面目にやらない、反省しない、放っておく、このアプローチ、結構有用だと思います。「そんなことで苦手なところを矯正していけるかっ!」と思われるかもしれませんが、これが案外いい線までいくものです。

不思議なもので、そうしていると、例えばだらだらの波のフェイスの上で思い切りセイルを倒したボトムターンを仕掛けるとか、そういうズレた動きをしなくなります。まだまだ技術的には上手くなくても、徐々に(ある時点からは急激に)自然に合わせられるようになっていきます。上手いのに自然に合わせられない人だってたくさんいるのにです。

「別に上手くならなくたっていいんです。その楽しさをキープできるなら」

昔スクールに入っていたビギナーの頃の僕は、インストラクターのその言葉に勇気づけられ、悪いところの確認や修正はイントラさんにお任せして、気楽に能天気にウインドサーフィンを続けていました。今でもそれは変わりません。自然に合わせることに頭を使わない方が、自然に合った動きになっていく。だってその方が自然だし、なんて思っています。

─── 山本隆義(ハレ サーフ&セイル_江の島

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▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_05 / あなたの自由を奪うもの〉
▶︎〈ウインドサーフィン・エッセイ_04 / 考えない人〉
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