自分に必要なものは何か? 「コンテストは僕に分からせてくれる」
───ヴィクターの言葉に日本のウェイブキッズの輝ける未来を思う───
2006年、ウェイブワールドチャンプになることを夢見る22歳の青年だったヴィクター・フェルナンデスは、南米チリで行われた小規模な大会で優勝した。小規模といっても、このとき3位だったのは2005年にPWAウェイブチャンプになったカウリ・シアディだから、そのレベルはかなり高かったものと思われる。それなのにヴィクターは、その勝利にまるで満足していなかった。
「ファイナルでゴイターを2発メイクできたことには満足している。コンテストでそれができたのは初めてだったから。でもヒート中に、もっと大きな波と強い風があればと思ってしまった。上手くいかない理由を置かれた状況に求めようとした。どんなコンディションでも、そこで最高のパフォーマンスができるようじゃなきゃダメなのに。コンテストは僕にそういうことを分からせてくれる。そこは自分のウインドの幅を広げるベストなステージなんだ」
ヴィクターはその4年後、2010年に26歳で念願のワールドタイトルを獲得し、’16年と’18年にも同じ王座についている。
3×ウェイブワールドチャンプとなった彼は、12歳で初めて国内(スペイン)のコンテストに参戦して以来、ずっとコンペティターとして戦い続け、今もその「幅」を広げている。
今日(7月12日)からウェイブパフォーマンスのメッカと言われ、ヴィクターのホームポイントでもあるグラン・カナリア島のポッゾにおいて、PWAウェイブシリーズの今季開幕戦が始まる。そのエントリーリストには日本の石井孝良(18歳 / メインドロー & U-20クラス)、杉匠真(16歳 / メインドロー & U-20クラス)、松井晴(14歳 / U-17クラス)、石井颯太(14歳 / U-15クラス)の名前も載っている。
4人は大会に出場するためだけにそこに出掛けたわけではない。5月下旬にその地に渡り、約3ヶ月間のウェイブ合宿を張っている。世界のトップライダーたちと一緒にトレーニングを重ね、世界のアクションに驚き、そして彼らとの本気のバトルを経験することになる。それが4人のウインドの幅をどれだけ広げることになるのか。
日本の少年たちはヴィクターと同じような道を歩みながら、ヴィクターと同じゴールを目指している。これからいろんな壁にぶち当たることになるかもしれないけれど、それでもめげずに歩んでいけば、若くしてベテランのような、質の高い経験を自分の血肉にしていくことができるだろう。
4人と彼らに続こうとしている日本のウェイブキッズたちを見ていると、ヴィクターやフィリップ・コスターのようなワールドチャンプが日本から生まれるかもしれないと本気で思える。少なくともここまでのプロセスにおいて彼らは、世界の頂点に続く道のど真ん中を歩いているように見えるのだ。歩け、歩き続けて、あるところから突っ走れ! ヴィクターの言葉からこんなイメージを喚起できたことを嬉しく思う。さあ行こう、みんな頑張れ。
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