爆風のグランカナリア島ポソで繰り広げられた、限界を超える戦い——若き日本勢も世界へ挑む

世界屈指の強風スポット、スペイン・グランカナリア島ポソで開催される「GRAN CANARIA GLORIA WINDSURF WORLD CUP」。2025年大会は初日から風速50ノットを超える過酷なコンディションが続き、まさに“生き残りをかけた戦い”といえる様相を呈した。そんな舞台に、今回は日本から10名の選手が参加した。杉匠真、石井孝良、颯太兄弟、守屋拓海といった日本を代表するトップライダーに加え、若狭夏希、野口颯、小西陽人、杉僚真の4名の高校生、さらに秋田ふみ、掛川竜誠という中学生2名が海を越え、この世界最高峰の戦いに挑んだ。特に杉匠真、石井孝良、颯太兄弟、守屋拓海、野口颯の5名はすでに国際大会での実績もあり、そのライディングは世界の観客やジャッジからも高く評価されている。だが、今回のポソのコンディションは想像を超えるものだった。

連日吹き荒れる50ノットオーバーの風と、押し寄せるパワフルな波。この中で行われた男子シングルエリミネーションでは、5度の世界王者フィリップ・コースターがマルシリオ・ブラウンとの激闘を制し僅差で勝利を収めた。最終スコア差はわずか0.06ポイントという紙一重の勝負だった。ジャンプではブラウンが上回ったものの、コースターは見事なノーハンド・ゴイターを含む高得点の波ライディングで逆転。ポソでの8度目の勝利を手にした。男子のダブルエリミネーションでは、コースターがアクシデントに見舞われながらも、スーパーファイナルで見事に巻き返し、完全優勝。ブラウンも10点満点のジャンプを決めて猛追したが、最後はコースターの巧みなコンテスト運びが勝負を分けた。地元のマリーノ・ギルは3位、マルク・パレは4位と、実力派たちが実力通りの上位を占めた。

一方、女子ではベテランのダイダ・モレノが2年ぶりの復帰戦で圧巻の優勝。ファイナルではスタールドフォワード、ワンハンド・バックループ、そしてゴイターを決め、全盛期さながらのパフォーマンスで王者サラ・キタ・オフリンガを抑えた。15歳のソル・デグリークはセミファイナルで24.5ポイントをマークし、初のポゾ表彰台に輝いた。

そんな中、注目すべきはやはり日本の若手たちのチャレンジだ。高校生4人と中学生2人がこの異次元のコンディションに果敢に挑んだ。彼らにとって、このポソでの経験はまさに“世界基準”を体感する貴重な場となった。波のサイズ、風の強さ、そして技の完成度。全てにおいて世界トップの舞台で戦うことは、日々のトレーニングでは得られない実戦経験である。50ノットを超える風の中で3.3㎡以下のセイルを使いこなす技術と身体的強さ、そして何より恐れず挑むメンタルの強さが求められるこのポソの舞台。日本勢の挑戦は、たとえ勝ち上がれなかったとしても確かな成長の一歩となったはずだ。世界の舞台に立ち、吹き荒れる風に立ち向かった日本の若き選手たち。過酷な環境で得た経験は、きっと次の世代を切り拓く糧となるだろう。
(写真・大会情報提供:PWA)
詳しい大会情報や映像はPWAホームページで確認出来ます。https://www.pwaworldtour.com/index.php?id=2337