『鎌倉学生選手権 2021』関東学連リーダーは誰だ!?
特派員報告=日本学生ボードセーリング連盟
広報・櫻井玲海(日本大学)
(『鎌倉学生選手権 2021』2021年12月18日~19日、神奈川県鎌倉市材木座海岸)
|| 来季を占う関東学連最終戦
毎年年末に行われるこの大会には4年生は出場しない。関東圏で学連に所属する約20の大学の次期主力となる2、3年生とルーキーである1年生が、新たに編成されるチームと個人の現在地を知り、来年へ向けて何らかの指針を得るために鎌倉・材木座の海に集結する。
今期(’21年)のエントリーはエキスパクラス(2、3年生)が100名、ビギナークラス(1年生)が94名。この数字からわかるのは明らかに新人が多いということで、私たちが実感しているのは、昨年までよりも関東学連全体の熱やレベル、そして選手各々のモチベーションが上がり、それぞれの戦いが激しくなっているということだ。こういう状態を続けていかなければ、右肩上がりの学連にしていかなければと強く思う。
レースは2日間ともこの時季には珍しい南風(沖から浜に吹く風)で行われた。ビギナー、エキスパともに4レースずつ(初日2レース+二日目2レース)。全体的に風は弱く、ほぼスキル&根性比べのパンピング合戦となったのだが、それぞれのクラスの最終レースでは予想外の風が吹き、最終的には選手の総合力が問われるレースになった。
当たり前のことだが、微風から強風まで、どんな風域でもどんな海面でも誰より速く走れるという総合力100の選手は学連には存在しない。多かれ少なかれ誰にも得手不得手があり、広い風域で行われる大会では、厭でもそのことが明らかになる。だがそれは悪いことではない。選手それぞれが今の自分と対峙することで、近い未来へ向けての自分を正しくイメージすることが可能になるからだ。誰が勝つかはもちろん重要だが、誰がこの機会を最も有効に生かせるか、それがこの大会で一番大事なことになるのだと思う。
|| 接戦と圧勝 ▶︎ ビギナークラス
ビギナークラスは、須田大輔(早稲田大学)と齋藤海斗(関東学院大学)とのタイマン勝負のようだった。初日、2つの軽風レースでトップを分け合い、二日目、途中でほぼ無風になった第3レースでも齋藤が2位、須田が3位と接近戦を展開した。この時点で二人の差はわずか1ポイント。ちなみにこの第3レースは、途中で文字通りの明らかな無風になったため、2周目の上マークまでにコースが短縮されたのだが、フィニッシュできたのは出場94名中わずか22名だった。滅多にないコンディションだったとはいえ、この22名とその他の選手の間には、小さくはない隔たりがある。フィニッシュできなかった選手たちは、微風時のボードの走らせ方やパンピングテクニックなど、改めて見直す必要があるだろう。
須田と齋藤の最終決戦となった第4レースでは風が上がった。ハーネスを掛けてリーパン(※)で走れるくらいまで。漕ぎ(パンピング)が上手い選手は下りでアンダーパンピングを続けることで、後続を引き剥がすことに成功していた。須田と齋藤はこの風域でも踏ん張った。それぞれ2位と4位でフィニッシュした。結果、全4レース中の1つのワーストレースのポイントをカットして算出される総合ポイントは、5対5の同点(リザルト表参照)。優勝はワーストレースのポイントが小さい須田がもぎ取った。
須田は常に自問自答を繰り返し「わからないことは積極的に質問しにいく」というタイプのセイラーで「負けず嫌いの性格がいい方向に転がっている」と語っている。齋藤は「なぜここでタックをすべきか」など、風と海面に対する知識が豊富で、大きなミスを犯さない。いずれにしても二人には、自覚できる強さがあるということだ。
女子では菅原なな(慶應義塾大学)が圧勝した。男女の区別のない総合成績でも8位に食い込み「格の違い」を見せつけた恰好だ。彼女は1年生でありながら、すでに豊富な優勝経験をもっている。しかし満足などしていない。「貪欲に努力を続けることが彼女の凄いところだ」と周囲の人たちも感心している。男子にも負けない女子に、他の女子選手はどのように対抗していくべきか? 答えを簡単に見つけることはできないだろうが、それでも何かを見つけて実践して、立ち向かっていくしかない。
|| 軽風なら井上、吹けば内藤、そして・・・ ▶︎ エキスパクラス
微風の初日、エキスパクラスでトップに立ったのは井上隆(神奈川大学)だった。第1レースでは西村伊織(日本大学)が、第2レースでは小林将(明治大学)が1位を取ったのだが、両レースを3位と2位でまとめた井上には届かなかった。
井上は安定していた。翌二日目の第3レースは、スタート5分前に一気に風が下振れし、リーパン、マスパン(※)を要する難しいレースとなったのだが、それでもぴったり下からスタートし、ポートを伸ばして有利な展開に持ち込んで、見事に1位でフィニッシュした。正確に言えば、井上は今大会のライトウインドレースでは、どんなときにも安定していた。その結果として優勝を勝ち取った。
だが井上に弱点がないわけではない。予想に反してマックス12m/sまで吹き上がった風の中で行われた第4レースで、井上は思い通りには走れていないようだった。海面のうねりも高かった。2上へのレグでは、ノンダガーのプレーニング勝負になった。いきなりの強風に半数以上の選手がゴールに辿り着くことができなかった。そんなレースで井上は、9位に順位を下げている。
逆にこの第4レースで、いきなり輝きを放ったのが内藤紳之介(明治大学)である。ジュニア時代からウインドサーフィンを続けている内藤は、2年生でありながら1下(マーク)を3位で回航、そこからぐんぐん追い上げて、最後はトップでフィニッシュ、総合順位を5位に上げた。
この結果からわかることは「ライトウインドなら井上」「吹けば内藤」であったということで、リザルト表から推測できるのは、二人の間にいる2位の岡本大成(慶應義塾大学)3位の倉鹿野巧(神奈川大学)4位の田中翔(明治大学)は「オールラウンダー」であったということだ。あくまでも今大会ではということだが、そのラベリングと多くの選手が彼らにもつイメージは、それほど違っていないだろうという気がする。このうちの誰が一番にそのラベルを自分が望むそれへと貼り替えるか。それとも「おいおい、オレを忘れるな」という選手が出てくるか。果たして来季の関東学連リーダーは誰になるのか。楽しみなところだ。
女子では柳川真奈(上智大学)が櫻井玲海(日本大学)を抑えて優勝した。櫻井とは筆者のことで、風が上がった第4レースでは男女混合リザルトで13位と健闘したのだが(って自分いうか?)軽風レースでは柳川に惨敗した。ウインド経験値の高い柳川は、男子の井上と同様に軽風では崩れない。本当に強いのだ。
だがその柳川を、彼女の得意な風域で破った選手がいる。岡朋加(明治大学)だ。岡は第1レースで男女混合18位・女子1位でフィニッシュして周囲をざわつかせた。そしてそのレース、柳川が男女混合28位であったこと、加えて岡がまだ2年生であることが、他の女子選手に衝撃を与えた。なんだこの子は! 岡は最終的に4位でレースを終えたが、今後マークされる存在になることは間違いない。彼女にいま足りないものは、これまでの積算練習量と経験だけかもしれない。だとしたら・・・とにかく怖い子出現である。女子選手のみんな、気をつけなはれや。
─── ※編集部注▶︎マスパン=マストパンピング=マストの位置を固定せず、セイル全体を大きく動かす(漕ぐ・扇ぐ)ことで、強い推進力を生み出すテクニック。主に0〜2m/sの風域で用いる ▶︎リーパン=リーチパンピング=マストの位置をほぼ固定した状態で行うパンピング。セイルのリーチ部のみを開閉させて推進力を生み出す。主に2〜4m/sの風域で用いる。
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