IWT 御前崎_Day 3
全44ヒート、5時間超の世界戦
時代を開いた日本の二人
All Photo by IWT Omaezaki Japan Cup_Akihiko Harimoto
12時から17時過ぎまでぶっ続け。「今日がその日だ」IWTならではのオートマチック・スタートでどんどん試合が進んでいく。結局アマチュアクラス6、マスターズクラス4、グランドマスターズクラス4、ユースクラス5、ウィメンズクラス5、プロクラス20=合計44ヒートが消化された。ユース、ウィメンズ、プロはファイナルまで終わったが、ベスト4の順位はまだ発表されていない。
【プロクラス速報】
1)杉匠真、金星奪取でベスト8入り
2018年PWA U-17クラス年間チャンプの杉匠真(J-7 / 16歳)が、世界の実力者の一人であるグラハム・イジーを破り、ベスト8入りを果たした。「いいジャンプはできなかったけれど」波乗りをまとめて金星を奪取した。マウイ島のホキーパをホームとするグラハムは、ビーチに向かって右から吹くスタボーの風に強い。ゆえにクロスオンにはなるものの、同じ方向から風が吹く御前崎でも(6度目の来日となる)これまで、その力を遺憾なく発揮してきた。杉はそのグラハムに初めて勝った日本人になったのだ。
グラハムには誤算があった。ヒート開始とともに仕掛けたはずのジャンプが「ヒート前の動き」と判断されてノーカウントになっていたのだ。さらにその後に仕掛けたダブルフォワードにも失敗して、2本必要だったジャンプが0に終わった。波乗りでは4発のリップ放つをロングライドをメイクするなどしたのだが、さすがにそれだけでは勝機を見出すことはできなかった。
杉には特別な思いがあった。何度も報じてきたように、杉はユース世代では世界のトップの一人として認められているのだが、この冬の日本の大会では満足な成績を残せていない。だからこの大会で本来の力を示しておく必要があった。このヒートの杉は少しオーバーパワーに苦しんでいるようにも見えたのだが、それでもバックループなどのジャンプをメイクして、波乗りでも得点を重ねた。正面切ってグラハムと戦って勝利した。
2016年にここ御前崎で行われた『ワールドパフォーマンス』開催時には、日本に彼のような選手が出てくるとは思えなかった。たった2年と少しで杉はその壁を崩したのだ。「こんな時代が来るものなんだね」と、大会スタッフの一人が言った。同感である。だが本当に驚くのは、僕らにとっての驚きがこれだけではないことだ。
2)石井孝良、トップ4ファイナリストに
2018年 IWT ユースクラス年間チャンプの石井孝良(J-20 / 18歳)は、シード選手として2回戦から登場、そのヒートで野口貴史を、続くクォーターファイナルでラス・ファラウト(2018年 IWT プロクラス年間ランキング5位)を下して4人のファイナリストの一人になった(結果は最終日に発表)。
石井は簡単には負けない。エアーを数発ぶちかましてロングライド、波の掘れたセクションで360、アレックス・ムッソリーニばりの──世界基準の高さのある──ワンフット・バックループなど、その動きを見ていると「勝ってほしい」と願うのではなく「強い」と感じる。自分に動きを合わせるのではなく、勝てるアクションに自分をアジャストしていく能力に長けているのだと思う。
さらに石井は、例えば接戦でヒート終盤を迎えたときにも、ゴイターやタカなど、最後に勝ちを引き寄せる決め手も持っている。世界に対して健闘するのではなく、勝てるスタイルをすでに確立している。それは杉にもいえることなのだが、石井(2001年生まれ)は杉(2002年生まれ)よりひとつ年上である。同世代の日本のライバルに負けるわけにはいかない、という意地もあるだろう。二人の勝負は、そのまま世界の頂点につながっている。
僕は昨日このウェブサイトで「明日はエポックメイキングな1日になるかもしれない」と書いた。それが今日現実のものとなった気がする。世界は彼らによって開かれたのだ。あとは勢い攻め込むのみ。そして僕らは、メジャーリーグ・ベースボールで活躍する日本選手を見るときのように、IWTやPWAで戦う彼らを本気で応援するのみだ。そうですよね。みなさん彼らの挑戦を楽しみながら見守って(後押しして)ください。
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