横須賀W杯_Day 4
メンズ・スラローム第2レース
穴見知典、全力の「賭け」に勝つ
5月13日、大会四日目。強風が吹き、風が振れ、雨が降り、風が落ちた。
今日はレース三昧の日曜日になると思っていたのに、なんてこった。
でも、いいニュースもある。風が続いていた午前10時から午後1時くらいまでのあいだに、メンズ・スラローム第2レースの1回戦4つと、2回戦の3つのヒートが消化され、日本選手二人が3回戦進出を決めたのだ。
その一人は浅野則夫、もう一人は穴見知典。二人は同じヒート7を走り、浅野が4位、穴見がトップでクォーターファイナル(ベスト32の戦い)へラウンドアップを果たした。やった! その瞬間、会場も大いにヒートアップ、拍手、歓声。
7.8㎡のセイルと107ℓのボードを選んだ穴見は「スタートは風上(側)から出ると決めていた」
外人選手は(もっと大きなボードである)デカスラにビッグセイルをセットしており、自分ももっと大きな道具(8.6㎡と127ℓ)を使えるコンディションではあったのだが、あえて少し小さめの道具を選んで勝負にでた。
「そのセットの調子が良く、特に(風下に)落としたときのスピードに手ごたえを感じていた。だからそれでいこうと決めたんです。それがこのレースでの一番の賭けでした」
穴見はレースプランどおりに一番風上側からスタートした。そしてそこから思い切り風下側に落としていくラインをとった。「そしてみんなを抑えてファーストマークでインを突く」という次のプランを実行した。それには誤差が生じたが、穴見はそれでもマークのインサイドを突き「2番」で最初のマークを回航した。そこからあとは引かず守らず、ただ攻め続けていくだけだ。第2マークでもインを突く。すると「よく覚えてないけれど、いつの間にかスティーブ(アレン)を抜いてトップにいた」
実際には、穴見は第2マーク回航後に、風上から風下へラインを落としたところで、上寄りのラインをとっていたスティーブを抜いていた。道具に対して充分な風がないときに風下側へとボードを向ければ、普通は艇速が鈍るものなのだが、それでも穴見は速かった。
「スティーブを抜いてトップに出て、後ろに(浅野)則夫さんがいることを確認したときには、むちゃくちゃ緊張しました。でも攻めるしかない。ブームを握る手が震えて、最後には腕がしびれてました」
穴見はその腕で小さくガッツポーズ。少し控えめに喜びと驚きを表現してフィニッシュした。
「ほぼ思い描いたとおりのレースができた」
去年はPWAの4つの大会を転戦した。
「でも1回戦は突破できても、いつも2回戦では4、5番で、3回戦には行けなかった」
その壁を今回はトップで越えたのだ。
「少し自信になりました。これまでの経験や慣れをプラスに生かせるようになったのかもしれません。
考えて、イメージして、それを実行できるようになったのかも」
穴見はいよいよ戦闘フェーズに入ったのかもしれない。
いま成長を感じている21歳の攻めの走りがどんな結果に到達するのか。
大会はあと二日。風よ吹け。
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