横須賀W杯_Day 3
メンズ・スラローム第1レース
世界のトップ8、美しく苛烈なマーキングバトル
5月12日、土曜日、大会三日目。今日はフォイルの第2レースとメンズ・スラロームの第1レースが成立した。どちらも世界を実感できる勝負だったが、一番印象に残ったのはスラロームのファイナル、世界のトップ8によるファーストマークのハードなバトルだ。
8人がフルスピードでそこへ突進していく、誰もスピードを緩めない。全員が計ったように等間隔に並んだ状態でジャイブに入る。彼らのあいだにあるその間隔は、大袈裟ではなく1mほどしかない。アプローチに入る。その角度も変わらない。マストの傾け具合も、セイルの引き込み角もほとんど同じだ。さらにセイルを返して再加速していくまで、彼らは同じようにアクトしてその混戦を脱出した。まるでみんなでシンクロナイズド・ジャイビングをするみたいに。
世界のトップにしかできない芸当だ。彼らのスピードでそれをやれば、普通は誰かしらが乱れてクラッシュが生じる。だがそのギリギリの状況下でも、彼らは乱れることがない。その光景が映し出されていた大型ビジョンの前では歓声が上がった。僕の全身の肌は泡立った。凄い、美しい、彼らには彼らにしかできないやり方があるのだ。そう感じた。
勝ったのはアントワン・アルボー。2位マテオ・イアチーノ、3位ピエール・モーテフォン。去年のランキングトップ3が、そのままの順番でフィニッシュラインを通過した。
あの8人の中でトップ3の座をキープすることがどれほどのことか。僕には想像できない。とにかく彼ら3人は、世界最高レベルのトップスピードを安定的にキープして、どんな状況でもミスを犯さない。ミスを予感させるところがない。ハイスピードをキープした状態で、じりじりと後続を第2集団にしていく。今日のレースで感じたのは、そんな彼らの怖さだ。当たり前のことだが、その圧をダイレクトに受けることになる第二集団の男たちが、彼らの牙城を崩すのは簡単なことではない。
日本選手として唯一3回戦(クォーターファイナル、ベスト32の戦い)に進出した浅野則夫は、そのヒートで6位。セミファイナル進出はならなかった。
ボードは114ℓ。風は7.7㎡と8.4㎡の中間くらいの強さで、どちらを選ぶかが難しい状況だったが、7.7㎡のセイルをチョイスした。そして浅野はスタートラインの風上側からスタートした。
なぜ? 風下側の方が有利だったはずなのに・・・。
「(そのヒートの)あのメンツでは、下側から出てもチャンスは少ない。上から出てマーキングで選手がまとまったところでインを差せればと思っていた。でもスペースがなかった。それになによりスタートが悪すぎた」
日本の絶対王者である浅野は、国内のレースではギリギリのスタートは切らない。だからだろう「このレースでもいつものスタートに近いスタートになってしまった」
いきなり世界モードへスイッチを切り替えるのは難しいのだろと思う。そうであるならば、次のレース、さらに今後のワールドツアーでの結果に期待したい。浅野がセミファイナルを戦う姿を見てみたい。
大会は15日まで続きます。みなさん、いろいろとお楽しみに。
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