NEW EQuipment 2018
RRD / Compact Wave
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※5 PIECE MAST=4 PIECE MAST + 1 EXTENDER
10月19日スペイン・カナリア諸島・グランカナリア島のジョン・スカイからメールが届く。
「革新的な道具が完成した。『Compact Wave』がそれだ。3枚のセイルとマスト、ブーム、エクステンション(ジョイント)──すべてのリグセットをバックパックに収納できるまったく新しいフルウェイブ・リグ・システムだ。
用意したセイルエリアは5.3 / 4.6 / 4.0 / 3.5㎡の4サイズ。ウェイトの軽いライダーなら4.6 / 4.0 / 3.5㎡を、
僕(182cm、82kg)のように身体の大きいライダーなら5.3 / 4.6 / 4.0㎡の3枚を選べばいい。
それさえあれば、ほとんどのウェイブコンディションをカバーできる。そうだろ?
もうかさばる道具に往生することはない。僕はこのバックパックをもって世界のウェイブツアーに出掛けていく。
重量は約17.5kgで、すべてが手荷物として機内に持ち込めるサイズに収まる。もちろんオーバーチャージもとられない。
『コンパクト・ウェイブ』は、その名の通りウインドサーフィンギアのコンパクト革命に成功したリグ・システムだ。
日本のウインドサーファーにも、ぜひこんな道具があることを知らせてほしい」

John Skye(K-57)RRD Sail Designer
ジョン・スカイ(K-57)は40歳。PWAワールドツアーをフォローして17年になるベテラン・ワールドカッパーであり、RRDのセイルデザイナーでもある。以下、彼から日本のウェイブライダーへ。
「このプロジェクトは3年前、RRDが開発したウインドサーフィン用のインフレータブルボード(『Airwindsurf Freeride)にセットするセイルをどうするか? というところから始まった。そのボードは完全なるプレーニング艇であり、高性能なマルチバテンセイルを必要としていた」
──もちろん既存のフリーライドセイルでも事は足りた。でもインフレータブルボードは空気を抜けばコンパクトになるのに、セイルが今のままでは面白くない。あなたはそう思った?
「そう、それで折りたたみ式のセイルをデザインすることにした。それがこのセイルの始まりだ。
ウェイブセイルを完成させるまでには、それから3年を要したけれど、満足できるセイルに仕上がった。
具体的には、素材の一部にダクロン(引裂強度、耐久性が高いポリエステル繊維)を採用したことでセイルに縦のストライプ・パネルを組み込むことが可能になり、2ピース・バテン・システムを開発したことで、セイルを真ん中で折り畳むことが可能になった。
マストは340cm。60cmのエクステンダーを使えば400cmになり、1本で3.5から5.3㎡までに対応できる。このマストはスタンダードマストと同様のベンドカーブを描き、セイルのどんな性能をも犠牲にしないものだ。
ブームはシンプルな2ピース。標準のアルミブームとカーボンブームも開発した。アルミタイプのスーパー・スリム・フロント・セクションのパイプの直径は25mmで、バックセクションは僅かに太く設計している。それは硬く、たわみが少なく、乗り手の疲れを軽減し、セイルの性能を引き出すブームだ」


上 / アウタークリュー=for パワー&ドライブ 下 / インナークリュー=for マニューバビリティ&コントロール
「テストは主に僕のホームポイントであるポッゾ(グランカナリア島にある世界屈指の強風ポイント、W杯の開催地でもある)と南アフリカのケープタウン、もちろんウェイブの聖地であるマウイでも行った。実際にバックパックにリグのすべてを収納して、さらにウエットスーツとハーネスなんかも詰め込んで、それを機内に手荷物として持ち込んでテストに出掛けて行ったわけだ。その度にこれでウインドトリップにおけるオーバーチャージの負担が(世界中で)どれだけ軽減できるのだろうと想像して、胸が高鳴る思いがした」

そのシステムがW杯でも十分に戦える性能を備えていることを確認した。
彼にとって世界最高峰の舞台は、重要なテストフィールドのひとつでもある。
「ウェイブリグとしての性能についても、もちろん自信をもっている。僕はこの道具でポッゾとケープタウンのほぼすべてのコンディションを経験した。強風のジャンプからライトウインドウェイブまで『コンパクト・ウェイブ』は、いつでもノーマルリグと同様に機能した。最近僕はこれ以外の道具の必要性を感じたことがないほどだ。
マウイではチームライダーのアレックス・ムッソリーニ(E-30 / 2017年PWAウェイブランキング4位、2016年同2位)にもテストしてもらった。彼はこうコメントしている。『このセイル(リグ)は、マウイのパワーのある波の中でも十分に機能する。360、ゴイター、トゥイークドエアー、ビッグバックループ、何を仕掛けても問題なし。そのパフォーマンスに疑いの余地はない』それに『車のコーナーにポンと積み込めるのもいいね』って」
「ウインドサーフィンは、これからもこのような革新を繰り返して、もっとシンプルにイージーになっていくことだろう。僕は『コンパクトウェイブ』が具現化したこのシステムが、ウインドサーフィンの未来の一部になるだろうことを確信している」
──僕(筆者)はその現物を見たことも触ったこともないので、知ったような口は利けない。でもこうは思う。
これまでにもコンパクトになるセイル(リグ)はいくつか開発されてきた。しかしそれらはどちらかといえばレジャー志向のトイ(toy)的なものだった。だが今回のそれは違う。確かなことは『コンパクトウェイブ』は、RRDのデザイナーであり現役ワールドカッパーでもあるジョン・スカイが、世界のウェイブライダーに向けて開発したものであり、ジョン・スカイも世界のウェイブライダーもその道具に妥協があれば、すぐに「感じられる」とわかっているということだ。
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