【WSF Interview_08_デルフィーネ・カズン / FRA-775】
《 排他的強風域 》
デルフィーネ・カズン_2016年PWAスラローム・シリーズ_リザルト
第一戦・韓国=3位(3)
第四戦・デンマーク=2位(3 / 4)
▶︎年間ランキング=3位
※カッコ内の数字は各レースの順位。
───「吹けばデルフィーネ」と2016年のチャンプ、サラキタは言う。おそらくほかの多くの選手もそう思っているはずである。
2015年のスラローム第三戦・ニューカレドニア大会で、デルフィーネはその圧倒的な艇速と強さを見せつけた。強風下で行われた全10レースで7度(2レースがカットとなった最終結果では8レース中7度)トップを獲って、ほとんど完璧な優勝を遂げたのだ。
腰を高い位置に置いた男乗りがもたらす艇速を武器とするサラキタは、そこでは2度しかトップを獲れずに惨敗した。その状況ではデルフィーネの方が、数段男前だった。その勝利により、デルフィーネは「デルフィーネの風域」を全選手に強く印象づけることに成功した。
───あなたのスラローマーとしてのストロングポイントはどこにあると思いますか。それとは逆に自分で認識している弱点はありますか。
デルフィーネ・カズン(以下:DC) 強みはどんなコンディションでも勝てること。ライトウインドでもミディアムウインドでも強風でも、海面がフラットでもウェイビーでもチョッピーでも。
ウィークポイントは、レースにストレスを感じることかも。でもそれよりも、レースでは常に何かが起こり、すべてのことに対して準備を整えておくことはできない、ということの方が大きい。時にそれが私を負けに導くこともある。
───あなたにとって一番のライバルは誰ですか。
DC たぶんサラキタ。彼女はすごい才能の持ち主だから。それに彼女はいつも何かにトライしている。フリースタイル、スラローム、ウェイブ・・・全部上手いし。
サラキタは、いつもクールで落ち着いているけれど、スタートラインについた時にはいつも虎視眈々とトップを狙っている。彼女は競技者としての熱いスピリットの持ち主で、しかも負けた時にも相手を祝福する寛大さを持ち合わせている。私はそんな彼女を高く評価しているの。
───あなたは2013年と2014年のスラローム・ワールドチャンピオンで、誰もが速いと認めています。でも、2015年と2016年は王座を明け渡してしまった。その理由をどう考えていますか。
DC 2015年は第一戦の韓国大会でたくさんのミスをして、それがそれ以後のレースでのプレッシャーにつながってしまった。自分のベストのレースができなかった。
2016年は大会が二つしかなくて、レースも(ライトウインドでのそれが)3つ成立しただけ。そのうちのひとつ、韓国のレースではフィンに海藻がからまって・・・まあ本当にストレスフル一年だった。ほとんどレースをしていないみたいなものだったから。
───今年チャンピオンになるために何が必要だと思いますか。あなたの来シーズンのレースプランを聞かせてください。
DC 毎年のことだけど、より速く、より対応力を高めて、いいジャイブをすること。それから精神的に、より強くなること。やるべきことは山ほどある。でもまずは自分がコントロールできるすべてのこと(身体的コンディショニングとか、道具のチューニング、十分なトレーニングなど)に対して準備をパーフェクトにしておくことね。そうしておかないと外的なもの(風とかライバルとか)との関係を、上手くコントロールすることなんてできないから。
───この5月には日本でワールドカップが開催されます。最後に日本のファンに向けて、何かコメントを頂けますか
DC PWAのカレンダーに『横須賀W杯』が組み込まれたことが本当に嬉しい。私にとっては今度が初めての日本になるわけだけど、私はそこが素晴らしい国だと確信している。新しい何かを発見できるだろうことに今からワクワクしています。
───強風では文字通りに他の追随を許さないデルフィーネは、他の風域でも強い。去年成立した3つのレースは、すべてライトウインド(あるいは超ライトウインド)で行われたものだが、それでも総合3位なのだ。
PWAワールドツアーは、本来いろんな場所、いろんなコンディションでレースを重ねて、レーサーの総合力を競うものだ。今季そのカタチが復活すると仮定すれば、デルフィーネは間違いなく優勝候補の筆頭格ということになる。
この短いインタビューの中で、彼女は「polyvalent(ポリバレント=多原子価の、多価の)」という言葉を二度使った。サッカーの日本代表監督だったオシム氏がよく使った言葉で、氏は「選手が複数のポジション、複数の役割を臨機応変にこなせること」を表現していたと思うのだが、デルフィーネは「より適応力高く」と言いたいのだと思う。
彼女が今以上にその理想に近づけばどうなるか? 想像もしたくないという選手も多いかもしれないけれど、僕は『横須賀W杯』でそれをたしかめたいと思います。