ANA 横須賀W杯_2017年5月11日開幕まで_あと83日

【WSF Interview_07_ロス・ウィリアムス / GBR-83】
《 メンタルの削り屋 》

ロス・ウィリアムス_2016年PWAスラローム・シリーズ_リザルト
第一戦・韓国=3位(3)
第二戦・スペイン=8位(17T / 2)
第三戦・フェルテヴェンチュラ=2位(4 / 3 / 11 / 2 / 4 / 2 / 1 / 17T / 7)
第四戦・デンマーク=16位(19T / 6)
第五戦・ドイツ=4位(4 /6 /5 / 7)
▶︎年間ランキング=3位

───上のカッコ内の数字は各レースの順位である。ロスは去年成立した全18レースのうち、14レースでファイナル(ベスト8)進出を果たしている。フェルテヴェンチュラの大会では、2つのレースがディスコード(カット)レースになっているので、有効レースでは2度しかファイナルを逃していない。
計算してみる。ファイナル進出率87.5%。とんでもない数字だ。あまり強調されることがないのだが、ロスは速くて上手くて強い、のだ。2015年以来、彼はそういうレーサーになった。トップを狙う誰もがマークせざるを得ない存在に。

All Photo by pwaworldtour.com_John Carter Photography
All Photo by pwaworldtour.com_John Carter Photography

───あなたのスラローマーとしてのストロングポイントはどこにあると思いますか。それとは逆に自分で認識している弱点はありますか。
ロス・ウィリアムス(以下:RW) 僕のストロングポイントは、強風でもライトウインドでも戦えること。どちらの風でも表彰台を経験しているということだ。もう何年もPWAツアーを戦ってきて、大会を通してぶれることなく、首尾一貫したレースを続けることができるようになっている。
自分のウィークポイントについてはわからないな・・・時々フィットネスと準備が結果を得るにふさわしくない状態にある、と感じることもあるかも、ってことかな。でもまあ昔はプレッシャーを感じると、よくミスをしたものだけど、最近はそれを飼いならす術も覚えたからね。

───あなたにとって一番のライバルは誰ですか。
RW 近頃は速いレーサーがたくさんいる。結果を得るためにハードなトレーニングを積んでいる若手も多い。でもここ何年かでいえば(9×ワールドチャンプの)アントワン・アルボーが一番の強敵だ。特に(去年王座を逃した)今季の彼は、誰にとってもより危険な存在になるだろうね。間違いなく。
それから来季をチャンピオンとして迎えるマテオ・イアチーノ。去年の勝利(の経験)が彼をさらに勢いづかせることだろうし、彼は連覇を達成するに必要な友人やスポンサーからの手厚い援助にも恵まれている。
ピエール・モーテフォンも強敵だ。彼は幅広いコンディションで最も速く走れるレーサーの一人だからね。(一昨年も去年も2位だったピエールは)もちろんワールドチャンプになることを渇望してもいるだろう。
2017年に成功を摑み取るチャンスのあるレーサーは、まだまだいる。ベン・ヴァン・ダー・スティーン(強風でバカっ速)/アーノン・ダガン(194cmだけど軽風でも速い)/ゴンザロ・コスタ・ホーベル(去年のシルトで2位)/パスカル・トセリー(今季ロフトセイルに移籍)/フィニアン・メイナード(吹きのレースの直線スピードは指折り)/シリル・ムッシルマーニ(2014年ランキング2位)とかね。
みんなが勝ちにくるし、その力ももっている。あとは誰がどれだけ自分の道具をチューンしきるか、シーズンを通して誰がベストに近いレースを継続できるかだね。

───あなたは2015年にある壁を破り、2016年にはランキング3位になりました。2015年以前とそれ以後で、何が変化したと感じていますか。
RW 最後に(3位の)表彰台に立てた2016年はスーパー・ハッピーだった。妻が強力にサポートしてくれたおかげで、生活を改善できたことが大きいと思う。あとはレースに対する強い気持ちと、最後まで諦めない決意、いい道具、ほんの少しの運。それらが僕を支えてくれた。2017年も同じようにやっていくつもりだ。特に気持ちの部分にフォーカスして、あまり結果ばかりを気にしすぎることなく。

───王者になるために何が必要だと思いますか。今季のレースプランを教えてください。
RW ワールドチャンプになるために大事なことは、長いシーズンをトップ・コンディションで戦い抜くこと。そしてすべての大会で勝ちにいくこと。それがどんな種類のものであれ「停滞」は勝利を遠ざけるものでしかないからね。

───日本の読者(スラローマー)に具体的なアドバイスをお願いします。速く走れるようになるには何をすればいいですか。
RW 自分の道具を理解するための時間を作ること、どうすればより良く機能するか、いつサイズの違うセイル、ボード、フィンに変えるのか。それは自分より大きな相手と戦う僕にとっても難しい問題だった。僕がより大きく(ベビーに)なる必要はなく、賢く(抜け目がないレーサーに)なるべきなのだと気づくまでは特にね。

───この5月には日本で『横須賀W杯』が開催されます。最後に日本のファンに向けて、何かコメントを頂けますか。
RW 僕は日本で真剣勝負ができることを誇りに思っている。前に日本を訪ねたときの経験は、僕にとっての大事なもののひとつになっているから。約束する。日本では100%、できる限りの走りみせるよ。

───ロスは軽風でも強風でも安定している。取りこぼしも少ない。(2016年ランキング2位の)ピエール・モーテフォンは「気がつけばいつもそこにいる」男の一人にロスを挙げたが、本当はもっと怖い存在なのだろうという気がする。
速くてミスの少ないロスは、競り合いに強い。だから対戦相手に「ミスはできない」というプレッシャーを与え続けることができる。レースを重ねるたびに、ロスは確実に相手のメンタルを削っていく。
早くレースのラダーから落ちてくれ。多くの選手が内心そう願うことだろう。だがロスは負けない。「やっぱり」と、そう思わせた時点でアドバンテージを獲得している。
イギリスのトップレーサーはそういう男だ(怖いですね)。

▲Ross Williams(GBR-83)4歳でウインドを始め、13歳で国際レースに参戦開始。長くマウイを拠点にガストラチームとトレーニングを重ね、マット&ケビンのプリチャード兄弟や、フィル・マクゲインらにプロセイラーとしての基礎を学ぶ。30代に入るとともに世界のトップ・スラローマーに。2011年から2016年までのPWAスラローム・世界ランキンングは14位、7位、17位、10位、4位、3位。2012年ウェイブランキング7位、2016年『アロハクラシック』11位と、ウェイブの腕もトップクラス(特に大波での波乗りに定評あり)。1980年、イギリス(イングランド)ワイト島生まれ、37歳。186cm、86kg。
▲Ross Williams(GBR-83)4歳でウインドを始め、13歳で国際レースに参戦開始。長くマウイを拠点にガストラチームとトレーニングを重ね、マット&ケビンのプリチャード兄弟や、フィル・マクゲインらにプロセイラーとしての基礎を学ぶ。30代に入るとともに世界のトップ・スラローマーに。2011年から2016年までのPWAスラローム・世界ランキンングは14位、7位、17位、10位、4位、3位。2012年ウェイブランキング7位、2016年『アロハクラシック』11位と、ウェイブの腕もトップクラス(特に大波での波乗りに定評あり)。1980年、イギリス(イングランド)ワイト島生まれ、37歳。186cm、86kg。