《Day 14_3 / 2016ケビンの乱、そのとき歴史が生まれた》
→《Day 14_2》の続き
スーパーファイナル。ケビン対ブラウジーニョ、再戦。ベストとは何か? 二人は考えていたに違いない。スタートホーンが鳴る。二人ともフルプレーニングで同じ方向へ走っていく。そして同じ波で、ほぼ同時に飛び上がる。ブラウジーニョはモンスター・バックループ、ケビンはスカイハイ・ワンフットバックループだ。ブラウジーニョは着水に失敗、ケビンは見事に完着する。1.12 対 7.38。
ケビンの思惑が当たった。まず最初にジャンプの得点を稼いでおいて、あとは波乗りに集中する。このコンディションでブラウジーニョに勝つには、それ以外に有効な方法は見当たらない。ブラウジーニョは、最初のジャンプでケビンの頭を抑えておきたかった。その上で波乗りの勝負をすれば、ケビンに勝てる可能性が大きくなる。しかしブラウジーニョの思惑は外れた。
ここからブラウジーニョの猛追が始まる。短時間のうちに2本のいい波を掴み、トゥイークドエアーなど、所々で捻りを利かせたロングライドをメイクする。そのカラフルなライディングに高得点が与えられる。そして波乗りポイントでケビンからリードを奪う。さらにバックループ、完着、5.62。これで総合ポイントでもケビンを逆転、流れは完全にブラウジーニョのものになる。
ケビンはなかなかいい波を取れずにいた。ヒート後半にトゥイークドエアーを2セット入れ込んだライディングで7.5ポイントを獲得したが、ブラウジーニョを逆転するにはあと1本、7.86以上の波乗りが必要だった。
残り1分。30秒、15秒・・・ケビンがポイントブレイクの波を掴む。ヒート終了のホーンが鳴る、しかしこの1本はカウントされる。トゥイークドエアー、さらにワンハンドエアー、その先のセクションもクローズアウトしていない、そこで最後のビッグリッピン’・・・どうだ? ポイント8.50、ブザービーター! ケビン・プリチャード大逆転、見事に優勝『アロハ』を制す。
感動した。それはすべての想像を裏切られたことに対する喜びだったのかもしれない。大会前に40歳のケビンが優勝すると予想した人はいるだろうか? 正直に言えば(失礼ながら)僕はケビンがシングルに勝った時にも、ダブルで王座を守り切るのは難しいだろうと思っていた。決戦当日の波がホキーパにしては小さめで、採点にジャンプが加えられたこともケビンに不利な要素だと思った。それは普段のPWAツアーのコンディション───ブラウジーニョのいつもの土俵───に近くなるということだからだ。
だが最後はブラウジーニョの方が得意とするジャンプのポイントでケビンの方が上回り(7.38 対 5.62)ケビンが得意とする波乗りの採点ではブラウジーニョが優勢(16.00 対17.12)だった。そしてトータル(23.38 対 22.74)では、40歳のケビンが27歳のトップランカーを破って優勝した。
なんてこった! 海、風、道具、人、シンクロ・・・ウインドは年齢も想像も超える。奇跡を起こせる乗り物である。ケビンを見てそう思った。ケビンのようにはいかないけれど、小さな奇跡なら僕らにも。ケビンさん、ボードに乗ってセイルに風を入れるということは、奇跡に向かって走り出すということなんですね(なんつって)。