聖地で一番強いのは誰か?
今年もウェイブの大祭が始まる
9月27日、突然PWAからのアナウンスがメールで届いた。
「我々と我々のパートナーは各方面から手を尽くしたが、残念ながら
今年のアロハクラシックをワールドカップイベントから除外することを決定した」
予算がショートしたのだ。最も歴史があり、しかもウェイブの聖地であるマウイ島ホキーパビーチで行われる大会なのになぜ? そう思われるかもしれないが、この問題は実は毎年のようにもちあがっている。
端的に言えば、今やウインドサーフィンの本場となったヨーロッパではまだスポンサーを見つけやすいが、マウイ以外ではその勢いが失われている米国では、なかなか大会スポンサーを見つけられないということだ。
それでも聖地マウイでの大会が、ウインドサーフィンというスポーツにとって特別なものであることに変わりはない。
業界も『アロハクラシック』をまさにクラシカルな大会として継続させるべく努力を続けている。
2012年はノースポンサーだった『アロハ』だが、13年は『JP』14年は『セバーンとスターボード』15年と16年は
『NoveNove』と、ウインドサーフィン・ブランドがメインスポンサーとなり、この大会をワールドカップとして
成立させてきた。だが今年はそれも叶わなかった。
『Aloha Classic 2017』は、IWT(International Windsurfing Tour)の中の一戦として開催される。
IWTはその前身であるAWT(American Windsurfing Tour)を発展させた組織であり、ホキーパローカルのケビン・プリチャードやモーガン・ノイローらが中心となって牽引している。今年はモロッコやバルバドス、バハ・カリフォルニアやペルー、チリなどで九つの大会を開催しており、今度の『アロハ』が十戦目で、その最終戦ということになる。
AWTの時代はウェイブだけだったが、IWTになってからは、レーシングやフリースタイルの大会も開催している。三種目で世界を回るという点ではPWAと同じだが、違うのはIWTはその種目に合った場所をセレクトし、そこで大会を開催しようとしているところだ。選手ファースト。IWTはまず選手が最高のパフォーマンスを発揮できる場所で大会を行うことで、最高のウインドサーフィンをアピールしようとしている。
彼ら(IWT)には強い危機感があるようにみえる。もちろんPWAにもそれはあるのだろうが、ケビンやモーガンらは、マウイ以外の米国におけるウインドの衰退を肌で感じている。だからこそマウイからハワイへ、そして米国へ、世界へとウインドサーフィンの素晴らしさを発信していかねばならないと強く感じ、世界ツアーという具体的な形でその思いを表現している。
今回の『アロハクラシック』はPWAからIWTへと引き継がれることになったわけだが、その流れはヨーロッパ→米国→世界への流れであり、決して後ろ向きなものではない。今は二つの団体が協力して世界をフォローすべき時なのだ。
大会会場であるホキーパビーチには、2014年・15年と『アロハ』を連覇したモーガンや去年の覇者であるケビンを始め、カイ・レニー、リーバイ・サイバー、バーンド・ロディガー、カミール・ジュバン、グラハム・イジーなど、ホキーパローカルであり世界のトップウェイバーである彼らが既にスタンバイしている。
さらに元々PWAのイベントカレンダーに組み込まれていた試合である。ヨーロッパからも多くのワールドカッパーが参戦してくるだろうことは間違いない。日本からも板庇雄馬(J-15)橋本洋(J-299)福井梁介(J-394)石井孝良(J-20)らの若手選手が早くから現地に前乗りしており(10月25日、杉匠真_J-723も合流した模様)世界レベルの選手とともに調整を重ねている。
大会は今度の日曜日(10月29日)に開幕し、11月12日(日曜日)まで続く。
その二週間のうちには、聖地ならではのビッグウェイブがブレイクする可能性が高い。
そのときそこで一番強いのは誰か?
『アロハクラシック』における勝利の意味や世界一の価値には特別なものがある。
選手の誰もが本気でそれを確かめにやって来る。
今年も大祭が始まる。
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