【WSF Interview_02_須長由季 / JPN-470】
《それは夢でも野望でもなく》
PWA ワールド・スラローム・ランキング 2016(Women)───
4位=大西富士子(J-94)
6位=須長由季(JPN-470)
9位=穴山未生(J-311)
9位=鈴木文子(J-61)
上記日本女子の四選手は、昨シーズンPWAツアーで行われた女子スラローム全2戦に出場、既にトップ32に与えられる『横須賀W杯』への出場権を獲得している。
「日本のレディスにはチャンスがある」メンズの代表選手、国枝はそう言った。彼女らには表彰台に上がる可能性があり、それを達成すれば、彼女らとこの大会が日本の若手選手の目標になるだろうと。さて当人はどう思っているのか。そのうちの一人、須長選手に話を聞いた。
───2015年にPWAにデビューして、これまでに3戦(計13レース)を経験してきたわけですけど、手応えは?
須長 トップの三人(サラキタ、レナ、デルフィーネ)は、やっぱり速いと思います。でもこれまでオリンピック・クラスのレースを経験してきて、本物のアスリートの中にいた(須長選手は2012年のロンドン五輪に参加したオリンピアンである)感覚からすれば、それ以外の選手に対してはちょっと頑張ればいけるかな、という感じはあります。
───なんていうか、やっぱりPWAよりオリンピック・クラスの方がピリピリした感じは強いですか。
須長 オリンピックの場合は、各国一人しか出れないので、選手は国を背負うことになります。だからPWAよりも一人ひとりの「プロ意識」が強い。日本ではまだあんまりですけど、世界にはまずユースのグループがあって、ナショナルチームにも一軍と二軍があって、ピラミッド型の強化体制を組んでいる国もたくさんあります。だから世界選手権レベルの大会でいい順位を獲るのは凄く難しいことなんです。
───だとすれば、PWAのスタートとかマーキングでのバトルなんて、なんてことないんじゃないですか。
須長 いえ、やっぱりドキドキします。まだ慣れてないんで。例えばオリンピッククラスのレースでフルダウンでジャイブに入るのと、PWAのレースでアビームくらいの角度でジャイブに入っていくのとは全然違います。アプローチの角度も出ていく角度も、それにスピード感も。スラロームは速いから、まだ怖さも感じます。
───須長さんにしても大西さんにしても、オリンピッククラスを経験してからPWAに来た人は、短期間のうちに上位に進出してくることが多いですよね。もちろん技術とかタクティクスとか、そういう部分が磨かれているからということもあるんでしょうけど、それよりも厳しい世界で鍛えられたメンタルの強さが大きいんじゃないですか。緊張をコントロールできるとか、怒鳴られても動じないとか。レース度胸とか、肝が据わった感じとか、そういう面に他の選手との違いを感じるんですけど。
須長 いや、でも緊張はしますよ。ただ全体のレベルとしてはオリンピック・クラスの方が高いかなとは思います。選手層も厚いですから。その中で競ってきた経験は、PWAでも生きているとは思います。
───PWAのトップ3との差について、どのように認識していますか。
須長 たぶん経験の差が一番大きいと思います。艇速では風によって勝ったり負けたりするんですけど、スタートとかマーキングとか、それから道具のチョイスの仕方とかチューニングの仕方などにまだ差があるように思います。そういうところの判断力とか瞬発力とかに。
───大会まであと五ヶ月を切りました。その間に経験の差を埋めるのは難しいと思いますけど、スタートで失敗さえしなければ勝てる可能性は高いんじゃないですか。一旦前に出てしまえば。
須長 自分がミスさえしなければ抜かれないとは思います。でも今年の韓国大会では、一旦トップに立って「あれっ、自分がこんなとこ走ってる」ってびっくりしちゃって、それで硬くなってジャイブで沈、ということもありましたから。すんなりとはいかないと思います。
───でもその経験は次のレベルの経験につながりそうですよね。トップで走り切るという。僕は是非ともその経験を目撃したいと思っています。
最後に横須賀W杯での目標を教えてください。
須長 優勝です。2位とか3位を目指していたら、そこにも辿り着けないと思うので。あくまで優勝を目指して、最低でも表彰台には上がりたいと思っています。
───トップ3との真っ向勝負、楽しみにしています。
(12月20日『ANA ウインドサーフィンワールドカップ横須賀大会』開催決定記者会見後、汐留シティセンターにて)
▼Ayako Suzuki(J-61)Mio Anayama(J-311)Yuki Sunaga(JPN-470)
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