《ANA 横須賀W杯_2017年5月11日開幕まで_あと136日》

【WSF Interview_01_国枝信哉 / JPN-22】
劇場型レースに探すべきもの》

PWA ワールド・スラローム・ランキング 2016───
53位=浅野則夫(J-25)
59位=穴見知典(JPN-60)
62位=国枝信哉(JPN-22)

既報の通り、来年5月、24振りに日本でW杯が開催される。
『ANA ウインドサーフィンワールドカップ横須賀大会』
上記日本男子の三選手は、昨シーズンのPWAツアー全5戦のうちの2戦にスポット参戦、既にトップ64に与えられる出場権を獲得している。

12月20日「大会開催決定」の記者会見が終わったあと、別室で会った国枝(敬称略ですみません)は「ぎりぎりだった」と笑った。だが今度の大会は彼のホームである津久井浜で行われる。この特別な大会をより特別なものとするために、彼には期するものがあるだろう。ローカルの意地? いや、そんなものが通用する世界ではない。とにかく今、彼がなにを思っているのか。話を聞いた。

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Shinya Kunieda(JPN-22) Ⓒpwaworldtour.com_John Carter Photography

───5月の津久井浜でワールドカップ、最高ですね。
国枝 ですね。GW前後の時季の津久井浜には85%くらいの確率でサイドショアの風が吹くんです。だからコンパクトな湾内にワールドレベルのコースが設定しやすく、多くの人に間近で本物のウインドサーフィンを見てもらえる。劇場型のレースができるんです。このスポーツの素晴らしさやダイナミックな部分を一般の人たちに理解してもらうチャンスですよね。特にスラロームは速い者勝ちのわかりやすい競技ですし。
───この何年か(ツアーの一戦である)韓国大会があまり風に恵まれていないから、来年は韓国、日本と風が吹いてくれるといいですね。
国枝 吹きますよ。いいレースになると思います。
この大会(横須賀W杯)は少なくとも五年の継続開催が約束されています。韓国と日本の大会が充実すれば、ワールドツアーの中でのアジアラウンドの重要度が増して、もっと長く続くかもしれない。これからの若い選手が目標にできる大会にするためにも、僕らが頑張らないと。「津久井浜」を世界の「Tsukui-Hama」にするためにも。
───選手としてホームアドバンテージはあると思いますか。
国枝 コンデションの変化を早めに察知することはできる。でもそれが外人選手に対するアドバンテージになるかといえば、ならない。彼らはそういうことを超越している。速さの次元が違うんです。
───その差は埋まらないものですか。
国枝 僕は2004年にPWAにデビューして、もう12年も年に一度は世界のトップレーサーと競っているわけですけど、それはなかなか埋まるものじゃありません。僕はもう46歳ですけど、今が一番速いと思います。でも他の選手も年々速くなっているから追いつけない。
───日本選手と速い外人選手との艇速差は何によって生じると?
国枝 9月のデンマークの大会で外人と走り(浅野)則夫君とも一緒に走ったんですけど、則夫君の技術は相当高くて、相当に速いんです。だから外人とも互角に戦える。でも結果には差ができる。
これは僕の印象にすぎないわけですけど、両者の差はトップスピードを維持できる時間の長さかもしれません。加速力、トップスピード、マーキングの技術など、どれをとっても則夫君のそれはトップレベルです。
でも速い外人は、なんなんでしょうね、則夫君と同じことを “ただ乗っただけ” でやってしまう、みたいなところがある。そこから先にもうひとつギアがあって、ボードをリフトさせ続けることができる。
彼らは元から高い土台の上に立っていて、しかも余力がある。身体の大きさや、道具に関する知識やチューニングのやり方なんかが関係しているのかもしれません。でもなぜそうなれるのか、本当のところはわからない。僕らとは次元の違う世界にいるからこそ得られる何かをもっているんだと思います。
───来年5月、横須賀大会での目標は?
国枝 ベスト32に入ること。できればベスト20と言いたいところですけど。いずれにしてもそこには高くて分厚い壁があります。でもその向こうに行かないと、そこでしか得られないものは吸収できないし、次に目指すべき場所も見えてこないと思うんで。
───「今が一番速い」国枝さんが、その時もっと速くなっていることを期待しています。ぱっと乗るだけで速い外人とそれでは速く走れない日本人との違いを、そしてそのギャップを埋める方法を解明できるといいですね。
国枝 解明すべく頑張ります。次の景色を見られるように。

(12月20日『ANA ウインドサーフィンワールドカップ横須賀大会』開催決定記者会見後、汐留シティセンターにて)

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▲Shinya Kunieda(JPN-22)就職、脱サラを経て2000年にプロ登録。2004年34歳でPWAツアーにデビュー。以後毎年ワールドツアーにスポット参戦。津久井浜のショップ『ティアーズ』のオーナーでもあり、また『三浦レーサーズクラブ』では、後進の育成にもあたっている。これまでのジャパン・サーキットにおける年間総合ランキング最高位は2013年の3位。46歳。