写真提供:ⒸStarboard_John Carter / ⒸTetsuya Satomura 協力:Takayoshi Yamamoto(HALE Surf & Sail)
<これからウインドサーフィンを始める皆さまへ>
ウインド サーフィンに限らず、新しく何かを始めようとするときには、わからないことや不安がつきものですよね。このページには、皆さんに少しでも安心してウインドサーフィンを始めていただけるよう、いくつかのちょっとしたアドバイスを記しておきます。そこでまず最初にお伝えしておきたいのは、ウインドサーフィンの楽しさを体験初日から感じ、安全に効率的に上達していくには、経験豊富なスクールに入るのが一番だということです。スクールを受ける前にウインドサーフィンの予備知識と受講イメージをもっておけば、よりスムーズに最初の一歩を踏み出せます。
<スクールのシステム>
全国各地にある一般的なウインドサーフィン・スクールは「予約制」であることがほとんどです。したがって、まずは電話などによって問い合わせ、受講予約を確定させることが必要になります。講習に使うウインドサーフィンの道具やウエットスーツ、ライフジャケットなどはスクールが貸してくれます。シャワー室や更衣室なども完備されています。受講する側が準備するものは、水着やタオル、夏期であればラッシュガード(紫外線対策用のシャツ)くらいのもので、海に入ってもかまわないシューズがあれば完璧です(※スクールにより準備するものに違いがありますので、詳しくは受講前に各スクールに問い合わせてください)。
ⒸFanatic_FishBowlDiaries
<スクールの流れ>
講習は最初に陸上でウインドサーフィンの道具や基本的な操作方法などについての説明があり、それから海上での実地講習へと移っていきます。通常の講習では数名単位のグループに一名のインストラクターがつくのが普通ですが、最初の海上練習では「マンツーマン」というのが一般的です。いずれにしても海の上ではインストラクターがいつもあなたを見守ってくれます。安心ですね。
<スクール選びのポイント>
講習の内容はスクールごとに様々ですが「安全に楽しく、効率の良い上達を促す」という点ではどのスクールも一致しています。だからアクセスのしやすさや、どのエリアでやりたいかでスクールを決めても問題はありません。中には有名なプロライダーが教えてくれるところもあります。事前の電話でスクールの雰囲気みたいなものを予め感じておくと、さらに安心できるかもしれません。
<ウインドサーフィンの道具について>
ウインドサーフィンの道具は、水に浮かぶボード部と風を受けるセイル部(リグ部)に大別されます。
(写真:1参照) ボード部 は、ボード本体とフィン(スケグ)、そしてダガーボード(センターボード)などから構成され(フィンとセンターボードは水面下のため写真には写っていません)、 セイル部(リグ部) は、セイル、マスト、ブーム、アップホールライン、さらにセイルとボードを繋ぐユニ バーサルジョイント(ジョイント)によって構成されます。
(写真:1)
Let’s Windsurfing
風向きを知る(感じる)
ウインドサーフィンが走るための原動力は風です。その風についての理論を知ることは大切ですが、いきなり複雑で難解な理屈を理解する必要はありません。最初に意識すべきは風向です。ウインドサーフィンを走らせるには、どの方向から風が吹いているのかを常に意識しておく必要があります。一番簡単なのは「指をなめてかざす」方法ですが、ウインドサーフィンに乗っているときには、頬や身体に当たる風やセイルのなびく方向などで風向きを判断します。最初のセイルアップや走り出しのとき、これがとても重要なことになります。
セイルアップ
ウインドサーフィンの第一歩はセイルを起こすことからはじまります。波もうねりも無く、風もそよ風程度の穏やかなコンディションであれば、わりと簡単にできます。逆に波があり強い風が吹いているときには、ボードの上に立つことさえ難しくなります。「はじめの一歩」を踏み出す際には、コンディションの見極めも重要になるということです。もちろんそのあたりのことについては、インストラクターが考えて様々な判断をしてくれるので心配はありません。何しろコツさえ掴んでしまえば想像以上に軽く、スムーズにセイルを起こすことができるようになるものです。ここは「習いながら慣れろ」でクリアしていきましょう。
1)ボードに乗る
浅瀬でボードを風上側、セイルを風下側に置き、背中から風を受ける状態を作ります。そしてボードの上に乗り、アップホールラインを掴んで、ジョイントを両足で挟むようにして立ち上がります。スタンスは肩幅くらい。ボードは不安定なので、中心線上に立つようにします。中心線を外すと、当然ボードは傾きます。
(※ ある程度の風が吹いている状況下では、セイルは風上、ボードは風下へと───セイルアップがしにくい状態に───自然に位置するようになっていきます。これは水に浸かっているセイルが錘りとなり、水に浮かんでいるボードが風下に流されていくからです。セイルアップの際は、ボードが風上、セイルが風下というのが基本なので、もしそうでない位置にある場合には、少しだけセイルを上げて我慢します。すると風の力でセイルが ─── セイルアップのしやすい ─── 風下側に流れていきます)
2)ボードとマストの直角をキープする
アップホールラインを持ってセイルの引き上げにかかります。ボードの中心線とマストが直角に近い位置関係にある状態(写真:2参照)をキープしながら、風上側に体重をかけて引き上げます。腕の力だけに頼らず、バランスを取りながら体重を利用することを忘れずに。重みを感じるのはセイルが水から離れるまでです。ボードとセイルの位置関係の調節は、アップホールラインを左右どちらかにずらして引くことで行います。
(写真:2)
3)重みの変化に即応する
セイルが水から半分以上抜けると、一気に軽くなります。その重みの変化に合わせて後ろにかけていた体重を素早く元に戻します(写真:3参照)。このタイミングを外してしまうと、そのまま後へドボンっということになりがちです。ここがセイルアップのポイントです。「セイルは水から抜けると軽くなる、その重みの変化に即応する」このことを覚えておくだけでも、対応の仕方や上達のスピードが変わってきます。
(写真:3)
4)セイルを引き上げる
セイルが水から抜けたら、アップホールラインを徐々に手繰り寄せ、前の手(写真:左手)でアップホールラインの根元かマストを掴みます(写真:4参照)。このとき注意したいのは、腕の力だけに頼らず、脇を締めて自分の体重も使いながらバランスを保つことです。次の段階ではいよいよセイルに風を入れて走り出すことになります。ここでの体勢がそのための準備姿勢(ニュートラル・ポジション)になるわけです。ボードの中心線に対して風向が直角に交わるようにしておくことが大切です。その位置関係の調節は、マストを左右どちらかに傾けることで行います。
(写真:4)
いよいよセイリング
セイルに風を入れて走り出す段階に移ります。セイルアップの項でも触れましたが、ウインドサーフィンに乗るときには、常に風向きを意識しておくこと、常に背中で風を受ける状態をキープしておくことが大切です。4)の項で説明した走り出す前の準備姿勢、ニュートラル・ポジションにあるときも同じです。ボードの上に立ち、セイルが風下側になびいている状態を安定させることが、スムーズな走り出しにつながります。そこからアップホールラインの根元を持つか、マストを持つか、どのような手順でブームを持ってセイルに風を入れていくか、などについては各スクールの教え方やコンディションなどによって変わってきますが、ここでは一般的な手順を紹介しておきます。
5)ボードの向きを変える
(写真:5参照)この状態からボードの向きを変えるときには、マストをボードの前方(ノーズ側)か後方(テイル側)に傾けます。するとマストを傾けた側が風に押されてボードが回転していきます。そのまま傾け続けていれば1回転することになります。その回転に合わせて足の位置を変えながら、ニュートラル・ポジションを整えます。
(写真:5)
6)セイルに風を入れる
(写真:6参照)まずは前の手(写真:左手)でマストを持ち、自分の方に引き寄せてから、後ろの手でブームを持ちます。グリップの位置は後ろの肩よりも後方に。同時にジョイントの近くにあった後ろ足も少しテイル側へ移動させます。
(写真:6)
7)走り出し
後ろの手の位置が決まったら、素早く前の手をマストからブームへ。さらに前の手を支点に、後ろの手を自分の方へ少しだけ引き寄せます。すると風の力、風の重みを感じます。前に飛ばされそうなったら、後ろの手を伸ばせばセイルから風を逃すことができます。ここでの調節がうまくいけば、ボードはするすると走り出します。ポイントは一連の動作を素早く(躊躇なく)行うこと。ブームを持つ位置や、足を置く位置などを風の強さなどによって(頭で考えず、本能的に)アジャストすることです。
(写真:7)
ウインドサーフィン? やってみたいけど、きっかけが・・・。そう思っている人は多いかもしれません。でも簡単です。スキー場に行って、スキー・スクールに入るように、海に行って、ウインドサーフィン・スクールに入ればいいだけです。今の軽くて扱いやすい道具や最新メソッドを用いれば、すぐに海の上を移動できるようになります。やがては海が自分の行動範囲の中に組み込まれて、人生が変わるかもしれません。大袈裟ですね。でもとにかく一度試してみてください。風を感じながら海の上を走るのは、それはそれは気持ちいいものですから。
Enjoy Windsurfing Life
ウインドサーフィンのショップやスクールの多くは「艇庫」と呼ばれる道具の保管場所やクラブも運営しています。だから自分の道具を手に入れても置き場に困ることはないし、一人で始めても自然に「海の仲間」ができてきます。一般的には初級スクールのあとにも、ステップ・アップ・スクールやメンバー向けの各種イベントが用意されており、本栖湖やサイパンやマウイなどでのウインド合宿も開催されます。もちろんホームゲレンデでのメンバーの安全セイリングを確保するための様々な策も講じられています。海を、ウインドサーフィンを、上達を楽しみ、常に適度に刺激的なウインドライフを送るには、ショップやスクールに入るのが一番です。