『御前崎ジャパンカップ 2023』Day 1(3月16日|木)

THE UNIFIED PWA IWT WAVE TOUR CROWNING THE WORLDS BEST RIDERS

2023 SPICARE OMAEZAKI JAPAN CUP
Men & Women Wave / March 16-21 / Long-Beach, Omaezaki, Japan / Photo by Akihiko Harimoto

|| 佐藤素子シングルイリミネーションに勝利す

大会初日にビッグニュースが生まれた。日本の佐藤素子がW杯プロ・ウィメンズ・クラスのシングル・イリミネーション(最初のトーナメント)を制したのだ。

御前崎にしては風は弱くオンショアで、波も小さかった。ジャンプのできるコンディションではなく、採点はベスト2ウェイブ・ピックアップ(ジャンプ無し)で行われた。ジャンプも武器にする素子にとっては、戦闘力が落ちること必至であり、初めから小さくはないハンデを抱えての戦いになった。

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Motoko Sato(J-0)

ボードは『スターボード・ウルトラ78ℓ』セイルは『セバーン・ブレード4.7㎡』ーーそれでもなかなか走らない。オンショアに合わせてバックサイドに走り、波のパワーをもらってフロントで一発リップを蹴るのが精一杯、最初はそんな感じだった。しかし素子は徐々に調子を上げていく。

フロントでリップ2発。あまり良くない波でも岸近くまでロングライド。さらにはいい波を見つけてロングライド。「さすがは御前崎ローカル」と、ギャラリーを唸らせるライディングを見せるようになっていく。

ファイナルの相手はスペインのマリア・アンドレス。彼女の特徴は動きが軽快なこと。パンピングもうまく、いったん波に乗ればよく動く。スキルも高く、リッピングからテイルスライドでリズムに変化をつけるなど、今どきのアクションも得意にしている。

ヒートの途中までは接戦だった、ように思う。だが素子はヒート終了間際にいい波を見つけた。サイズもある。走れるフェイスも残っている。リップ、さらにリップ、バックサイドに振ってエアリアル、最後にフロントでもう一発リッピング。不十分なコンディション下で技に溢れたロングライド。これで決まりだ!

ジャッジ判定は3対0。素子完勝。W杯女王の座を獲得す。まだダブル・イリミネーション(敗者復活戦)が行われる可能性も残ってはいるものの、シングル・イリミネーションの結果がそのまま最終結果となる可能性も同じくらいある。そうなれば素子は2004年にマウイ島・ホキーパで開催された『ハワイプロ』以来、19年振りに2度目のワールドチャンピオンになることになる。凄い。そういうレディスウェイバーが日本にいることを誇らしく思う。

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Motoko Sato(J-0)/ María Andrés(ESP-2)

|| 石井孝良 ベスト8進出(景色を変える男ども)

午後4時前。続けて行われるプロ・メンズクラスの選手たちがヒート前のウォーミングアップのために出艇していく。と、景色が変わった。風はそれほど強まっていないはずなのにどの選手もよく走る。さすがは世界のトップランカーたちだ。スピードが違う。バックループやテイブルトップ・フォワードなどのジャンプも軽々と決めて見せる。

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Marcilio Brawzinho Browne(BRA-105)

例えば2022年のPWAワールド・ウェイブ・チャンピオンであるブラウジーニョは『ゴヤ・ナイトロ3_98ℓ』に『バンザイ5.6㎡』を使っていたのだが、彼が引き出すスピードにより道具が実際よりもコンパクトに見えるほどだった。彼のセイルはパンパンに張っていた。おそらくアンダー寄りのセッティングをしていたのではないかと思う。そのセイルに思い切り風を孕ませて、ぶんっぶんっぶんっと、こちらに音が聞こえてきそうなほどの力感あるライディングをして見せる。

彼らのライディングにはパワーがある。もちろんみんながみんなそうだとは言わないけれど、世界のトップランカーの多くはライディングにパワーを感じさせ、同時にそこにぎこちなさを感じさせない。ほぼすべてのパワーをスムーズにフローさせていく。

そういう彼らのライディングが御前崎の景色を変えた。この日のコンディションをグレードアップしてくれた。こんなことができるのか! と多くのギャラリーを驚かせた。

メンズクラスは2回戦までが終了。以下のベスト8が出揃った。

石井孝良(J-20)/アントワン・マーチン(F-193)/モーガン・ノイロー(HI-101)/フィリップ・コスター(G-44)/マーク・パレ(E-334)/リカルド・カンペロ(V-111)/バーンド・ロディガー(US-1113)/マルシリオ・ブラウジーニョ・ブラウン(BRA-105)

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Takara Ishii(J-20)

石井孝良は2回戦でランキング9位のロビー・スウィフトを下した。ダイナミックなスラッシュバックと4発のリップを含むロングライドが決め手になったのだろう。孝良のマニューバーはオンショアでも美しい。波を縦に使いにくいぶん、波を横に使って、ターンのラインを横長に描いていく。そのためより長くターンを続けなくてはならないのだが、その動きはまるで絵画の巨匠の筆遣いのように見えたりもする。

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Takuma Sugi(J-7)

昨年の世界ランキング10位、注目の杉匠真は2回戦でマウイのバーンド・ロディガーに敗れた。杉はいいライディングをしていた。オンショアならではの横のラインで、波の中腹で1回、ボトムでもう1回と、ひとつのターンに2度のピークがあるようなラインを描いて得点を稼いだ。だがバーンドはなぜか波を縦に使った。風がサイドショアであるかのように、深いターンからリッピング、エアータカまでメイクして見せたのだ。なんでそんなことができるのか? 謎だ。

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Bernd Roediger(US-1113)
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Hayata Ishii(J-27)

石井孝良の弟、颯太も2回戦で姿を消した。相手がワールドチャンピオンのブラウジーニョだったのだから仕方ない。なんて颯太は思っていないと思う。今頃ヒートの動画を見返しているかもしれない。ブラウジーニョは練習のときと同じようなパワフルかつスムーズなライディングを見せた。颯太も諦めることなく、リップ3発を含むロングライドなどで対抗した。違いはどこにあったのか? 真剣勝負からしか得られない多くの気づきがあったことと思う。

大会は21日まで続く。次はどんなサプライズが起こるのか。楽しみだ。


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