Fly! ANA Windsurfing World Cup YOKOSUKA MIURA Japan
Men & Women Slalom / November 11-15 / Tsukuihama Beach, Yokosuka, Japan / Photo by John Carter_pwaworldtour.com
||「フォイル対フィン」爆風決戦
今日もまた風が吹いた。昨日よりも強く、激しく。津久井浜の朝の海面は荒れていた。しかし美しくもあった。チョッピー、チョッパー「チョッピエスト」最大級のチョップ(風波)の頂点が風に砕かれ、レース海面を白く泡だてていた。PWAの発表:風はマックス35ノット(17.5m/s)。今大会の第4レース、爆風スラロームが始まる。
多くの選手がフィンを選んだ。当然だ。ここまで吹いた中で、あの高揚力発生装置であるフォイルを選ぶのは、あまりにリスクが高すぎる。いくら加速を抑えて乗ったとしても、あの水中翼の勢いを抑え切ることなど不可能で、それは遅かれ早かれ空中に飛び出して、システムを崩壊させることだろう。
そう思った。だが、想像を超えて多くの選手がフォイルを選んで海に出た。久しぶりに「フォイル対フィン」の構図が生まれた。今や他の風域ではそんな言葉は使われない。フォイルが圧倒的な速さを証明しているからだ。だが強風を超える超強風域ではどうか? フィンは最後の砦を守れるか?
守れなかった。この風域でもフォイルはフィンを圧倒した。レースはだいたい次のようなパターンで決着した。スタート直後はフィンも健闘する。流石に吹けば速いと思わせる。だがそれも長くは続かない。接水型のフィンボードは、海面の影響をまともに受け、チョップを越えていくたびに、ボードを激しく揺さぶられ、徐々に、あるいは急激にその勢いを奪われていく。一方フライトするフォイルボードは海面を叩かない。強風でも軽風時と同じように、静かにスムーズに効率良く加速していく。そしていつの間にかフォイル集団がトップグループを形成するようになっていく。
フィンはスタートから第1マークまでのレグでリードを奪っていなければ話にならない。ノーチャンスだ。ならばそこでリードを奪うことができたとしたら? それでも勝てる可能性はきわめて低い。ただフォイルは前にいるフィンを無理に抜こうとはしない。ただ安全にマークを大回りしていくだけだ。まるで「それで抜ける」と確信しているかのように。
フィンはいくら強風でも、ジャイブの立ちがりでスピードを失い、そこから元のスピードを取り戻すまでに時間を要する。そのあいだに、フォイルは細く大きな弧を描き、無接水(ほぼ)無失速で復帰に手間取るフィンを抜いていく。まるで「おつかれさまー」とでも声をかけていくような感じで。そして大回りしたところから、ぎゅーんとラフして、次のマークに対して最適なコースへと戻っていく。その繰り返しだ。マークを回っていくたびにフォイルはフィンとの差を広げていき、最後は余裕でゴールイン! ということになる。
|| フォイルがフィンを駆逐する?
フィンはトップグループを形成するフォイルに続く、第2集団にしかなり得ない、という感じだった。ではフォイル同士の戦いはどうなるか。第1パックを形成したフォイルグループは、多くの場合、自分たちしかいなくなった第2マーク以降のジャイブでやり合う。それは古典的な方法で。トップに立っているフォイルは、何よりスピードを重視してジャイブマークを回航する。対して後続フォイルは相手のインを突いて、フレッシュウインドを掴んで、パンピングして、ジャイブの立ち上がりをより早くして、抜きにかかる。そのバトルは激しいものなのだが、やはりフォイル特有の空中戦であるために静かであり、そのシステマチックな動きには形式美のようなものも感じさせる。爆宮の中でそれをやられると、見ているこちらは自分の中の何かが乱されるような、何とも言えない気分になる。
この第4レースの男子のトップ3は、ニコラス・ゴヤード、エンリコ・マロッティー、アントワン・アルボー。みんなフォイルだ。彼らとともにファイナルを走っていたフィンスラロームは、クラシカルな乗り物に見えてしまった(大好きなんだけど)。昨日の記事では「PWAのスラロームはフォイルに席巻されてしまった」と書いたが、ここに訂正する。「フォイルはPWAのスラロームからフィンを駆逐しつつある」
今大会の2日目、フォイルは「限界微風」のラインを引き下げ、今日は「限界強風」のラインを引き上げた。今日のレースはエポックメイキングなレースになったと言えると思う。もうPWAのスラロームにフィンの出る幕はなくなるのかもしれない。
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