インカレ個人戦 / 学生日本一決定戦
特派員報告=日本学生ボードセーリング連盟
広報・櫻井玲海(日本大学)
(『全日本学生ボードセーリング選手権大会』11月16日~19日、沖縄県国頭村 オクマプライベートビーチ&リゾート)
|| 決戦の地、憧れのオクマプライベートビーチ&リゾートへ
『全日本学生ボードセーリング選手権大会』通称「インカレ個人戦」つまりは「学連日本一は誰だ!?」の戦いである。会場は沖縄オクマビーチ。砂浜も海も朝日も夕日も、宿泊施設も美しく、リゾート感に溢れる場所だ。ここで戦う。この最高の舞台で戦うためにみんな今日までやってきた。
早い選手は13日に、翌14日には全ての選手(男子111名、女子48名)が現地に前乗りしていた。その誰もがコンテナで届いていた道具を浜に降ろすや否やすぐに出艇、練習を始めた。この海のこと、このエリアの風や潮のこと、少しでも多くの情報を収集しておく必要がある。それが実戦での判断の早さにつながり、自信の根拠のひとつになる。気合いが入る。勢い込みすぎないように、自分を抑えることも必要になる。コントロール、バランス、という言葉が頭に浮かぶ。
16日には全選手、全道具の計測が行われた。『テクノ293』によるワンデザインレースをより公平に行うために。もちろん不正はゼロ。道具は同じだ。勝負は選手のメンタル、フィジカル、スキルで決まる。まずは自分との戦いに勝てなければいい結果を残すことはできない。当たり前のことだが、それだけにプレッシャーは強くなる。
|| 曇天微風、まさかの連続消耗戦
17日、開会式。その後予定通りに出艇のホーンが鳴る。選手らが待ちかねたように海に出る。何枚ものオレンジ色のセイルがエメラルドグリーンの海と青い空との境界線を消していく。嘘だ。イメージではそういうことになるはずだったのだが、いやなんとも天気がよくない。空はグレーだ。それでもオレンジ色のセイルはよく映える。これはこれでいい景色であることに変わりはない。しかし選手らの艇速が一向に上がっていかない。風が弱いのだ。しかもどんどん落ちていく。なんでこうなるの? 13日以降、昨日までは毎日プレーニングできるくらいのいい風が吹いていたのに。レースではよくありがちなことだけど、こんなビッグレースにまでそんな「あるある」が当てはまらなくたっていいようなものなのに。
結局初日の午前中はノーレース。午後、東寄りの微風で2レースが行われた。2日目(18日)もほぼ同様のコンディションで3レース。途中一時的に風速が中風域に達したものの、ほぼコース全域でパンピングが必要とされる厳しいレースとなった。で、この時点(第5レース終了時)でのトップは───
▶︎男子=三浦 圭(明治大学)/2位の倉鹿野巧(神奈川大学)とのポイント差16 ▶︎女子=大島 萌(京都大学)/2位の松浦花咲実(同志社大学)とのポイント差11。二人ともこのコンディションではダントツのほぼ無双状態。他の選手より明らかに速く、まるで二人だけが違う風を受けて走っているかのようだった。弱い風を誰より無駄なくボードに伝えてスピードに変換する。どうやって? 教えてほしいくらいだ。
||「北風強く」の予報も外れた「折れたら負け」のパンプ合戦
3日目(最終日)朝からの雨が一時大雨になり、気温もどんどん下降していく。水着で待機していた選手たちが続々とロングジョンやシーガル、フルのウエットスーツを着始める。身体を冷やしてはいけない。でも・・・今日も風が弱い。レースが始まればパンピングすることになるのは必至だ。あまり厚着をすると動きにくくなるうえに、途中で体感温度が上がり、発汗量も多くなって、酷く体力を奪われることになってしまう。何を着るかも勝負のうちで、その選択は難しい。
それにしてもなんてこった。昨日の天気予報では「明日は北風が強く」と言っていた。多くの選手は(特に強風を得意とする選手たちは)やっとこの時期の沖縄のレギュラーウインドでレースができると期待していた。なのに雨はやまず、風も一向に上がる気配すら見せてくれない。その上風向も定まらない。
D旗(出艇合図信号)はなかなか揚がらない。風は初日、2日目とほぼ同じ。また微風。またパンピング。筋力も体力ももう限界。なのに風に頼って走れない。ぬおーっ! 何かを叫びたくなる状況である。実際、悲鳴のような声を上げる選手も多くいた。
14時過ぎ。雨が上がり、晴れ間がのぞいた。予定より5時間遅れでレースが始まる。だが風はあまり変わらない。こうなると2日目までの順位に大きな変動は起こりにくい。この日は4つのレースが行われ、第6レースで男子の三浦が77位と捨てレースを作ってしまったものの、それでもトップは揺るがなかった。女子の大島は3つのレースでトップを獲り、2位に24.5ポイントの大差をつけて優勝した。
|| 予想外も想定内、三浦・大島、レースプランを遂行す
三浦と大島、二人のすごいところは、2日目までに万全の態勢を築き上げていたことだ。仮に3日目に強風が吹いて、その風域を得意とする選手が上位にきたとしても、なんとか踏ん張りきれる、そういうポジションに自らを置いたこと。それが勝因になったと思われる。結果的には強風は吹かなかったが、そのぶん二人はそれまでより余裕をもって、ほぼそれまでと同じように、この大舞台を走りきった。二人ともレースプラン通り、思惑通りの優勝だったのではないか。「見事」というしかない。「日本一おめでとう」と手放しで讃えるしかない勝利である。
最終レースのゴール付近では男子10位まで、女子6位までの入賞枠争いがヒートアップしていた。事前にポイントを計算していた上位の選手らが、最後の最後まで全ての力を絞り出すようにボードを前へ前へと進めていた。入賞圏内に入った選手は歓喜し、圏外に弾かれた選手の中には涙を滲ませるものもいた。またこの大会で引退となる4年生の中にも涙する選手は少なくなかった。全ての選手がいい学連ライフを送るために、あるいはいい学連ライフだったと振り返るために、この大会は重要な意味をもっている。また来年、オクマで学連のドラマが見られることを期待している。
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