─── 編集余話 10 ───
50歳になった「百年王者」は、今なにを思うのか
Photo by JC＝John Carter
ビヨン・ダンカベック＝42のワールドタイトルホルダーであり「百年王者」「ターミネーター」の異名を持つ男。90年代の無敵の王者が、この７月、50歳を迎えた。2014年、45歳でPWAツアーを退いたビヨンだが、彼はまだ枯れてなどいない。今もほぼ毎日海に浸かり、自分のため、子供たちのため、このスポーツの未来のために戦いを続けている。
ビヨンDは、今なにを考えているのか。PWAのオフィシャル・カメラマンであり、ビヨンとの親交が深いジョン・カーターが訊いた。腰痛からの復活、年齢による変化、ウインドキッズの育て方、帝王ロビー・ナッシュとの関係、そして世界スピード記録への挑戦についてなど、話は多岐に及んだが、ビヨンのウインド愛は一貫していた。次号に掲載するそのインタビュー記事の編集を進めていくほどにそのことが深く染み込んでくるように伝わってきて、僕は嬉しくなったものだった。
ところで僕は若かりし頃、全盛期のビヨンに何度かインタビューを試みたことがある。ビヨンからは自然発生的に威圧的オーラが発せられており、僕は見事に気圧されてしまった。「アナタノー、ツヨミハー、ドコニアルト、オモイマスカァ？」「見ての通りだ」「デスヨネー」って突っ込め。ダメか、ぷしゅーっ、電池切れか、撃沈。無敵のターミネーターに対したポンコツの初期型AIロボットのように、そのとき僕はまるで機能しなかった。
でも今ならビヨンとだってもう少し話せる気がする。彼の話を書いていてそう思えた。量も質もレベルもスケールも異なるけれど、年を重ねても強くなれる部分は確かにあるのだ。オレだってポンコツ初期型AIロボ_2.0くらいにはヴァージョンアップしているはずだ。「そうだ頑張れ、俺も頑張る」記事の中でビヨンはそう言ってくれているような気がした。
以下、次号（Windsurfing Vol.7）には未掲載の雑談的質疑応答である。ウインドサーフィンとはほとんど関係のない話だが、ターミネーターを構成する細かいパーツがどんなものかを想像できるような気がするという点で興味深い。
──好きな映画は？
Björn Dunkerbeck（以下：BD）『ブレイブハート』や『グラディエーター』みたいな冒険アクションもの。『ミッション・インポッシブル』もいいね、トム・クルーズが真剣に取り組んでいる。映画は考えすぎずに、楽しめるのがいい。『007』もクリント・イーストウッドの西部劇も好きだな。
──お気に入りの本は？
BD 前回本を読んだときのことは覚えているよ。
──愛車は？
BD 2年前からメルセデス、それからディーゼルのE6ロング・マルチパーパス、これは家族とウインドサーフィン・ギアのキャリアとして。
──お茶派、コーヒー派？
BD 間違いなくコーヒーマンだ、コーヒーとレッドブル！
──PCはWindows、それともMac?
BD Mac。壊れにくくて使いやすい。もう何年もMacを使っていて、一度別のを使ったことがあるけど、またMac。
──スマートフォンは？
BD Android。最初はiPhoneだったんだけど。
──ウインドサーフィン以外のスポーツで好きな選手は？
BD 難しい質問だ。でも好きなのはしばらくトップにいる選手みたいだ。例えばテニスのラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラー。スキーならウインドサーファーでもあるアクセル・ルンド・スヴィンダル。それからつい数ヶ月前に引退したけれど、史上最高のGP（オートバイ）レーサーの一人で、僕の友人でもあるダニ・ペドロサ。彼もまたウインドサーファーで、ちょくちょくここ（ポッゾ）で乗っている。あとF1で僕が好きだったのは、間違いなくミハエル・シューマッハと、僕と同じヒューゴ・ボス・チームにも所属していたアイルトン・セナだ。僕は彼らに数回会うことができた。幸せな時間だったよ。
ちなみに僕（筆者）はかつては圧倒的にロビー派だったのだが、今はビヨンも大好きになった。「ターミネーター的百年王者」が、そのままの威厳を持ち続け、しかもいい感じで優しさが滲み出るような人になるなんて、昔は想像していなかった。ギャップ萌えか？ とにかく今のビヨンもカッコいいのだ。ぜひ次号でご確認ください。
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