東京 2020 オリンピック

RS:X級 レース7~12 / 須長、富澤メダルレース進出ならず

2020 Tokyo Olympic Windsurfing Racing Site, Enoshima, Kanagawa / ⒸTetsuya Satomura
2020 Tokyo Olympic Windsurfing Racing Site, Enoshima, Kanagawa / ⒸTetsuya Satomura

【7月28日(水)レース3日目 / レース7~9】【7月29日(木)レース4日目 / レース10~12 】

レース後半戦。風は両日ともに12~16ノット(6~8m/s)の南風。海面には中途半端で厄介そうなピッチのうねりがあるものの、オリンピック・レーサーたちにとってはプレーニングコンディションであることに間違いない。富澤慎、須長由季にとっても絶好とは言えないまでも、チャンスをモノにしやすいだろうと思われる状況だった。二人はいい走りを見せた。だが届かなかった。

3日目▶︎須長=11位/22位/10位で総合14位 / 富澤=17位/11位/11位で総合15位

4日目▶︎須長=7位/14位/17位で最終順位12位 / 富澤=16位/11位/11位で最終順位16位

二人ともベスト10圏内に食い込むことができず、メダルレース進出を果たせなかった 。
 
 
|| 富澤 慎 20ノット超の激走及ばず

3日目を終えた時点で富澤と10位の選手とのあいだには35ポイントの開きがあった。その差を最終日の3レースで埋めるのは難しい。ならば。富澤は起死回生の策はないにしろ、こうなれば開き直って今の自分の最高の走りを、とレースに臨んだのではないか。

速かった。最終第12レースの富澤の艇速は、下りのあるポイントでは20ノット(37km/h)を超えていた。トップ集団の選手らと何ら変わらないスピードだった。ではなぜ? 戦術、戦略に問題があったのか? わからない。

富澤の全12レースのリザルトを見てみると、10位が1回、11位が5回ある。ベスト10前後をキープして、あるとき爆発、上位に食い込む。それが彼本来の戦い方だと思うのだが、今大会ではそれを遂行することができなかった。初日の第2レースでは21位に沈み、2日目の第5レースではタイムリミットに引っかかり、大きくポイントをロスしてしまった。

もしかしたら五輪という大舞台で彼の中に何らかの混乱が生じ、それに追い立てられて、思考が追いつかなくなり、焦り、空白になった時間があったのかもしれない。オリンピックの魔物に取り憑かれた時間が。もちろんこれは推測だが。

ただ確かなことは、最後までファイトした ─── 最後の6レースで4度トップ10争いをした ─── 富澤は、世界のトップレーサーと真っ向勝負ができる日本に稀有なウインドサーファーであり、オリンピックに相応しいアスリートであるということだ。
 
 
|| 須長由季 “ザ・ボーダー”

レース4日目(オープニング・シリーズ最終日)の第10レース、須長は7位でフィニッシュ、総合順位を11位に上げた。10位のブラジル・パトリシアとのポイント差を8に詰めた。残り2レース、逆転できない差ではない。ここから須長とパトリシアとのサバイバルレースが激化する。

第11レース、第12レースと二人は互いを強く意識してレースを進めた(はずだ)。須長はパトリシアより少し先にフィニッシュするだけはトップ10には入れない。8ポイントを埋めるためには、ギャンブル的な走りも必要になってくる。だからあえて離れたコースを取ることもあった。だが、どう走ってもどこかでパトリシアと遭遇した。この風域での二人の力はきわめて接近していたのだ。

二人とも必死だった。しかし最後のレースでは須長の仕掛け───スタート後ポートで右海面へ出たパトリシアに対して須長はスタボーを伸ばした───が裏目にでたか、上マーク付近ではその時点で14位の須長が9位のパトリシアを追う展開になってしまった。こうなってはポイント差を埋めきるのは至難の業だ。結果パトリシア12位、須長17位。最終順位パトリシア10位、須長は12位でメダルレース進出を果たせなかった。二人のポイント差は12。

残念なのはレース3日目のトラブルだ。その日の第8レース、須長のポイントは22。このときネットのライブ中継はなく、僕は文字情報による速報を見ていたのだが、メモには「第1マーク須長19位、第2マーク19位、第3マーク21位、フィニッシュ22位、どうした須長、プレーニングレースで22位なんてことあるか? 何があった?」とある。どうやらフィンに海藻が絡んで、それがなかなか取れずに、やむなく一度ボードを降りるしかなかったということらしい。

なんという不可抗力。この第8レース、パトリシアは7位で、ここで二人のあいだに15ポイントの差が生まれている。これさえなければ須長は・・・。いや、もうやめよう。レース後彼女は「一生懸命やりきったので後悔はありません。たくさんの応援ありがとうございました(JWAフェイスブックより)」とコメントしている。

こちらこそ、ありがとうございます。あなたと富澤さんの走りによってずいぶん熱くなることができました。多くの人がオリンピックのウインドサーフィンを身近に感じ、心を震わせたことと思います。

RS:X級(ウインドサーフィン)今後の競技日程 ▶︎ 7月31日(土)15:33~ 男子・女子メダルレース

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