ウインドサーフィン・エッセイ_02

ふたつのリズム
Text=Takayoshi “Yanmer” Yamamoto(HALE Surf & Sail_Enoshima)

Adam Lewis(K-516)& Victor Fernandez(E-42)/ ⒸFanatic_Fish Bowl Diaries
Adam Lewis(K-516)& Victor Fernandez(E-42)/ ⒸFanatic_Fish Bowl Diaries

道具を運んでセッティングして10分。ウエットに着替えて5分。1時半には海に出られる。3時に待ち合わせがあるから、まあ1時間ちょっとは乗れる。がっちりスケジュールを頭に入れて出艇する。

でもすぐに忘れてしまう。ボードを海に浮かべて、セイルに風を入れた瞬間にきれいさっぱり。

脳内でパチンとスイッチが切り替わる。特に朝夕は少し肌寒く、日中ウエットを着るとほどよい感じになる今頃のシーズンはお手上げだ。僕の場合、予定通りに上がれることはほとんどない。だから次に用事があるときには必ずといっていいほど遅れる。小さくではなく大きく。で、多大な迷惑をたくさんの人にかけ、安くはない代償を払うことになる。

でもそんなの関係ねぇ、なんて言えない。僕は半端な小心者であるうえに、完全なる社会不適合者なのだ。

けれど海でパチンがなくなったら終わり。そこで時間を忘れられなくなったらアウト、という気もする。面白くも何ともない。日常の中にある常識とかしがらみとか、ねちねちと体にまとわりついてくるものが乾燥してブチブチ切れて、やがて風の、波の、海のリズムに支配されていく。それがいい。

いや最近は約束の時間を日暮れ以降にしたり、潮の止まる時間にしたりして、海のリズムと日常のリズムとを何とか噛み合わせるように努力しています。

いい具合に噛み合う人に僕はなりたい。

─── 山本隆義(ハレ サーフ&セイル_江の島

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