彼らは冬のあいだに速くなる

久しぶりに『三浦スラローム シリーズ(今季より『横須賀・三浦スラローム シリーズ』に改名)』を観に行って驚いた。1月13日の日曜日、会場である津久井浜の駐車場(その名も『ウインドサーフィンW杯記念駐車場』)にはウインドサーフィンの道具をたんまり積んだ車(もちろんハイエース的なワンボックス車が多い)がずらりと並んで停められていた。ビーチの半分は色とりどりのセイルとボードで埋め尽くされ、浜と駐車場のあいだの通路には、ウェットスーツに身を包んだレーサーたちが、少し忙しそうに行き来している。寒そうには見えない。空は青くからりと晴れ上がり、黒っぽいウェットの生地が太陽の光を吸収している。この時季には珍しいポカポカ陽気。それでも北東方向からいい風が吹いている。それが冬の津久井浜だ。

Yokosuka-Miura Slalom Series #1 / NeilPryde-JP Cup_2019.01.13
Yokosuka-Miura Slalom Series #1 / NeilPryde-JP Cup_2019.01.13

『(2019年シリーズ第一戦)ニールプライド / JPカップ』のポスターが貼られた本部テントに顔をだす。「明けましておめでとうございます」と今大会の冠スポンサーとなった『ニールプライド / JP』の脇元さんと挨拶を交わし『F-ホット(フィン)』の加藤さんが「大掃除で風呂の天井を拭いていたら、湯船の縁から落ちて肋骨を折った」話でひとしきり笑い合う。スタッフの方から温かい甘酒をいただいてほっとする。「それにしてもたくさん来てますね」と、この日は運営スタッフの任に就いてた山田昭彦プロに声をかけると「うん、100人以上来てますよ」とのこと。100人以上!

エントリーリストを確認する。スペシャルクラス47名、オープンクラス37名、セミオープンクラス13名、レディスクラス12名、フォイルクラス11名、合計120名。実際にはフォイルクラスに跨って出場している選手が10名ほどいるので、合計110名くらいということになる。当日は暖かかったとはいえ、この厳冬期にこれほど多くのウインドサーファーを集めるレースは滅多にない。それに加えて多くの一般セイラーも訪れるのだ。そんなゲレンデだってそうはない。彼らは駐車場代などを支払うことで地元の経済にも貢献しており、またマナーもいいのでその来訪を歓迎されている。さすがはフラットウォーター&北系の風ギャランティーの津久井浜。「日本のスラロームのメッカ」と言われるだけのことはある。

でももちろんメッカは突然そこに出現したわけではない。プロレーサーとして活動しながら地元で『ティアーズ』というショップと『MRC(三浦・レーサーズ・クラブ)』を運営する山田昭彦、国枝信哉、香村治彦らがコツコツとそこに構築したものだ。もちろんそのほかのスタッフや地元の人々の協力を仰ぎながら。いろいろあった。でもそれについて書き始めるときりがないのでここでは省略。『横須賀・三浦スラロームシリーズ(旧・三浦スラロームシリーズ)』の成り立ちについてちょっとだけ触れておくことにする。

小学生から83歳の現役セイラーまで、レースビギナーからW杯に参戦する日本のトッププロまで。真冬の津久井浜に100名超のスラローマーが集結。『横須賀・三浦スラローム・シリーズ』は(たぶん)日本一の草レースに成長した。
小学生から83歳の現役セイラーまで、レースビギナーからW杯に参戦する日本のトッププロまで。真冬の津久井浜に100名超のスラローマーが集結。『横須賀・三浦スラローム・シリーズ』は(たぶん)日本一の草レースに成長した。

|好循環を生み出すシリーズ戦|

このシリーズレースがスタートしたのは2001年のことだ。当時も今もマウイで開催されている『マウイ・レース・シリーズ』というのがあるのだが、彼らはそのシリーズ戦に参加して、津久井浜でも同じようなレースができないものかと考えた。マウイのレースにはPWAのトップレーサーも、日本のプロ以上に速いアマチュアレーサーも参加していた。いくつかのクラスがあり、選手のレベルも年齢層も幅広く、誰もが真剣にレースしていた。オフシーズンにそこに行き、レースに出ることは何にも勝るトレーニングになった。

そういうシリーズレースを津久井浜にも定着させたい、と彼らは思った。無理だという人もいた。津久井浜のオフシーズンは寒すぎると。でも彼らは始めた。何より津久井浜には風が吹く。よっぽどのことがない限り、冬はほとんど毎日プレーニングできるのだ。仲間は少しずつ増えていった。レースのない日にも次のレースに向けて練習に訪れるセイラーが多くなり、冬の津久井浜の景色が変わった。海上には鮮やかな色彩のセイル飛び交い、海面にはたくさんの白い航跡が交錯するようになった。やがて津久井浜は「日本のスラロームのメッカ」と呼ばれるようになり、2017年には『PWA W杯(ANA ウインドサーフィンワールドカップ横須賀大会)』も招致された。『横須賀・三浦スラローム・シリーズ』も恒例イベントとして定着し、19年目の今年は100名以上のエントリーを集める日本最大級の(おそらく日本一の)草レースに成長した。

7このレースのいいところは、誰もがレベルに応じたクラスで自分の力量を測れること。力量を知り、目標を立て、すぐに次のレースで自分の力の推移を確かめられることだ。単発のレースではそうはいかない。このレースの参加者たちは、そうして冬のあいだに速くなっていく。それがオンシーズンにもつながり、彼らは(多くの場合)一年中好循環の波に乗り続けることができる。そしてそういう彼らが増えていくことにより、メッカの骨組みがより堅固なものになっていく。

今回は5クラス、13レースが成立した(下のリザルト表参照)。海から上がってくる彼らは、みんないい顔をしていた。勝った人以外は悔しさも大きいはずだが、それよりも達成感や開放感みたいなものをより強く感じられたからだろう。彼らの思いは、もしかしたらホノルルマラソンでゴールを切ったランナーのそれに近いのかもしれない。自分なりに全力を尽くした、自分がみんなのなかのどこにいるかも確認できた、そして何よりみんなで走るウインドサーフィンが楽しいことを実感できた。そうだとしたら、とても嬉しい。

2019年の『横須賀・三浦スラローム・シリーズ』は、あと四戦残っている。スポット参戦(エントリー費=5,000円)も可能だ。興味のある方は是非一度出てみてください。いろいろメリットはあると思うけど、冬の海に出るモチベーションが上がることは確実です。そしてこれまでとは違う春を迎えられることになるかもしれません。
 
 
2019 横須賀・三浦スラローム・シリーズ / 開催日程
▶︎第二戦 / 2019年2月24日(日)_ストリームトレールカップ
▶︎第三戦 / 2019年3月10日(日)_東京ガスボードセーリング部カップ
▶︎第四戦 / 2019年3月24日(日)_GA・タブーカップ
▶︎第五戦 / 2019年4月07日(日)_スターボード・セバーンカップ

クラス分け
▶︎スペシャルクラス(プロまたはショップライダークラス)(55歳以上は別表彰有り)
▶︎オープンメンズクラス(一般クラス)(55歳以上は別表彰有り)
▶︎セミ・オープンクラス(レースビギナークラス)(中学生以下は別表彰有り)
▶︎レディスクラス
▶︎フォイルクラス(アビームコースクラス)

▶︎問 / MRC(三浦レーサーズクラブ)☎︎046-840-1273
※シリーズ戦参加申込用紙はこちらから

Yokosuka-Miura Slalom Series #1_Special Class Start Scene

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