御前崎『ジュニア ユース ウェイブ選手権』

Junior Youth Wave Championship 2017
2017.12.29_Long-Beach, Omaezaki, Shizuoka
世界最先端の『ウインドキッズ養成クラス』
All Photo & Movie by Juntaro Sugi(Zushi Marine Blue)

12月29日、御前崎ロングビーチで行われる『ジュニア ユース ウェイブ選手権』。これが2017年の仕事納めになる。
横浜青葉インターから西へと向かう東名高速は帰省ラッシュの前の静けさか、意外なほど空いていた。
10時半ごろに会場に到着。風はぶんぶん吹いている。強風というより暴風に近い。大会はすでに始まっている。マストの先やブームエンドにストリーマーをつけた小さなセイルが、小さな子供たちに支えられて御前崎の海を行き来している。
あとで知ったことだが、彼らは主に2.0〜3㎡台前半のセイルを使っていた。
昔『御前崎の海に入るための条件』というような記事を作ったことを思い出す。かつてはエキスパートのみがゲティングアウトを許される海だった。その海で今は子供たちが走り、風上へ上り、波に乗り、再び沖へと向かっていく。

Junior Youth Wave Championship 2017 @ Long-Beach, Omaezaki
Junior Youth Wave Championship 2017 @ Long-Beach, Omaezaki

聞けば、なかには小学校二年生のキッズもいるという。みんなが安全にセイリングできるようにと、何人ものプロ選手や元プロ選手らが陸上と海上で彼らを見守り、ウォータースタートのサポートやジェットスキーによる声かけなども行っている。「やっとこういう時代が来ましたよ」と、元プロの一人が言った。
こういう時代? こんな時代が来るなんて、僕は想像できなかった。
小学校二年生の子が大人顔負けの動きを見せ、中学生や高校生がプロを連想させる演技を完成させる時代が来るなんて。そのなかに世界 ───『アロハクラシック 2017』─── のユースクラスで1-2フィニッシュを果たした石井孝良(16歳)と杉匠真(15歳)という世代の旗手的存在が生まれるなんて・・・彼らを近くで見守り育ててきた両親や、彼らが所属するチームのスタッフ以外に、いったい誰が想像できたことだろう。

Takara Ishii(J-20)
Takara Ishii(J-20)

 

 

Takuma Sugi(J-723)
Takuma Sugi(J-723)

杉匠真は、今大会でゴイターを決めた(動画後半参照)。フリーセイリング時にはタカをメイクし、スーパーセッションでは何度もダブルフォーワード(動画前半参照)にチャレンジしてギャラリーを湧かせた。そして石井孝良は、そんな杉をファイナルで下して見事にU-22クラスでの優勝をものにした。彼らのライディングを見ていたキッズたちは「タカラくん、すげぇー」とか「タクマくん、ダブルだー」とか、真剣な面持ちで歓声を上げていた。

ゴイターとかタカとかダブルフォワードとか、彼らは世界基準の高難度トリックを当たり前の技として捉えている。そしてある子はそのメイク率と完成度を高めるために、ある子はいつか(近い将来)その技をメイクするために、イメージの濃度を高めようとしている。かつては、というか、ちょっと前までは日本のウェイブライダーの誰もがただ憧れるだけで、ほとんど誰も真剣にトライしようともしなかった数々の技を、若い彼らは当然成すべき技として「自分のものにしよう」としている。

そう、時代は変わったのだ。日本のウェイブはとんでもない時代を迎えているのかもしれない。
おそらくこれほどレベルの高い『ジュニア ユース クラス』は、世界を見渡してみたってそうはない。
このクラスにおける実力偏差値では、日本がトップではないかとさえ思えてくる。トップかもしれない。
小学生からU-22の選手までが、そんな刺激的な環境の中で日々成長を遂げている。

おそらく彼らの思考回路やイメージの作り方は旧世代のそれとはまるで違う。だからこそ世界基準の動きが可能になる。
ひと時代前の僕らには彼らのことはわからない。だからこそ期待が膨らむ。
日本の『ジュニア ユース クラス』は、単なる子供たちのクラスではない。それは世界最先端の『ウインドキッズ養成クラス』になっている。それが今大会を見て、最も強く感じたことだ。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、僕は近いうちに彼らがその答えをだしてくれるだろうと感じている。それはとんでもなくポジティブなニュースになるかもしれない。僕らの想像が及ばないくらいの。

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